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第35話

「怖かった。ホントに死ぬかと思ったよ」 「よしよし」  交通省、航空会社の調査から、マスコミへの応対。  伸彦は、疲れ切っていた。  温かく迎え入れ、包み込んでくれるのは愛する満。  彼になら、弱音も吐ける。  ようやく人心地ついた伸彦だ。 「とにかく、着替えて。何か食べる? 先にお風呂がいいかな」 「満のアイスが食べたいな」  自宅の一階をカフェにして、手作りアイスを作っている満。  彼もまた、幼い頃の夢を形にしていた。 「解った。準備するから、着替えちゃって」  うん、と言いつつ伸彦は離れない。  離れない、離さない。 「もう少し、このままで」 「……うん」  二人は、静かに抱き合った。  玄関に飾った小さなクリスマスツリーの光が、伸彦と満を柔らかく照らしていた。  優しい光が、二人を祝福していた。

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