35 / 35
第35話
「怖かった。ホントに死ぬかと思ったよ」
「よしよし」
交通省、航空会社の調査から、マスコミへの応対。
伸彦は、疲れ切っていた。
温かく迎え入れ、包み込んでくれるのは愛する満。
彼になら、弱音も吐ける。
ようやく人心地ついた伸彦だ。
「とにかく、着替えて。何か食べる? 先にお風呂がいいかな」
「満のアイスが食べたいな」
自宅の一階をカフェにして、手作りアイスを作っている満。
彼もまた、幼い頃の夢を形にしていた。
「解った。準備するから、着替えちゃって」
うん、と言いつつ伸彦は離れない。
離れない、離さない。
「もう少し、このままで」
「……うん」
二人は、静かに抱き合った。
玄関に飾った小さなクリスマスツリーの光が、伸彦と満を柔らかく照らしていた。
優しい光が、二人を祝福していた。
ともだちにシェアしよう!