21 / 21
見守り役で、恋人未満で5
「腰がだるい……」
数年ぶりの朝帰り。俺は、疲れきった身体をシワシワになっていた布団にダイブさせた。
ズキズキ痛む腰。ダルい身体。
そういえば昨日のあれが、俺の初めてだったことを思い出す。
「あぁくそぉ〜……やべぇってこれ。クセになりそう」
あの日。南雲君に連れられ、一番高いラブホに入った俺達は、ずっと抑えていた糸がプツリと切れたみたいに抱き合い。そして触れ合った。
「ぅ、ぅんっーー」
南雲君は、俺に息を吸う暇も与えない深いキスを繰り返し。
「ぅっ、ぁ」
お互い着ていた服を脱ぎ捨てると、汗ばんだ首筋や横腹に赤い印を付けていった。
まるで、自分のものだと唾をつけるように。あちこちに……。
「そうだった」
その記憶が何故か急に蘇り。俺はダルい身体を起こして、服をめくって鏡を見た。
鏡に映る俺の赤い斑点だらけな身体。首や腹だけでなく。胸や背中にまであっちこっちにある。上半身でこれだけあるなら、下半身の方も相当付けられてるだろう。
「ははっ。えげつな……」
大量の赤い斑点に、流石の俺も少し鳥肌が立ってくる。
ここまでくると、もはや怪我だらけ……いや病気みたいだし。
でも、アイツがどれだけ俺を好きだったのかも……なんとなく伝わった気がした。
「俺って、こんだけ好かれてんだな……。俺もいつかはこの気持ちに応えないと、悪いよな……」
「おはようございます西國さん!どうですか?身体は大丈夫ですか?」
艶々な肌をキラキラ光らせながら、朝から元気よく部屋に入ってきた南雲君の姿に、一気に疲れがどっと出てきた。
あんだけヤッたっていうのに、なんでコイツはこんなに元気なのか。
「ねぇ、南雲君。俺の姿ちゃんと見てる?大丈夫なわけないよねぇ?ねぇ?ねちっこく長ったらしくしやがって……この絶倫野郎」
「なに言ってるんですか!西國さんの体力が無さすぎるんですよ!良かったら今度、一緒にジム行きましょう!」
「嫌だよ。だるいわ」
「えぇ~~」と文句を垂れる南雲君を無視して、淡々と身支度を済ませていると。後ろから伸びてきた両腕が、俺の身体をギュッと抱き寄せてきた。
「ねぇ西國さん。俺の事……好きですか?」
いつか聞かれるだろうと覚悟はしていた。
けど今はまだ答えが出せない。うまく言葉に出来ない。自分の気持ちに正直になれない。
きっと俺は今まで色々ありすぎたから、ただ単に怖がってるだけだと思う。
でも。俺の側にずっといてくれるのなら、きっといつかはーー。
「きっと、多分、いつか……好きだと言える日が来ると思うから……それまで、待っていてほしい」
「!!……はい。今はそれで充分嬉しいです」
俺は、まだ誰かを好きになるのが怖い。
でも、ずっと俺を好きでいてくれるであろう彼の側に居ればきっと、俺はこの口で「好き」だと言える日が来るだろう。
それまで俺達の関係はーー。
「友達以上、恋人未満って感じですかね?」
「……」
口にされると、やっぱりこれでよかったんだろうか……と。また新たに悩みが増える俺であった。
ともだちにシェアしよう!