12 / 32

第12話

 豊が走らせる鉛筆の音だけが、アトリエに響く。 「……」 「元宮くん」 「はい!?」 「息は、普通にしててもいいから」 「あ、うん」  何となく息を詰めていた響は、ふぅと大きくため息を吐いた。 「あ、いいね。その表情。そのままでいてくれる?」 「う、うん」  モデルは生まれて初めての響に気を使ってくれたのか、豊は腕を動かしながら話しかけて来た。

ともだちにシェアしよう!