32 / 32

第32話

「結婚、してくれるかな。俺と」 「いや、あの、それは。僕たち、まだ未成年だし!」 「じゃあ、結婚を前提としたお付き合いを」  お願いします、と深々と頭を下げる豊。  バケツに活けた、赤いバラの花束を思い出した。  ああ、塚本くんは、自分の罪を曖昧にしない潔さを持っている。  僕は、この人を好きになれるかな。  いや、もう好きなのかもしれない。  ためらう響に、豊は歯切れのよい声をかけた。 「ジャンピング・勇気!」 「OK、ジャンピング・勇気!」  恋人から始めよう、と響は豊に手を差し伸べた。  豊がその手を取り、温かな握手を交わした。  二人の間に、雨上がりの虹の架け橋がかかった。  心の中は、晴れ渡っていた。

ともだちにシェアしよう!