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第三章・36
「今は泣くな。今晩、またたっぷり泣かせてやっから」
「え」
ええええっ!? と玲は自分の体に両腕をまわし抱きしめた。
「やだ。だってさっき、あんなに」
「あれは浮気のお仕置きと上書きだ」
やたら冷静な秋也の声。
そして玲の顔に張り付いた紙吹雪を一枚そっと手にとって、ふうと吹き飛ばした。
「今夜のお楽しみは、誕生日のお祝いとしてだ」
もう、と玲は両手で顔を覆った。
でも、嫌ではない自分がここにいる。
「シャワー、浴びてくる」
僕の誕生日は、今始まったばかりなのだ。
軽やかな足取りで、玲はバスルームへ向かった。
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