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第四章・2
「今夜の飯は、リゾットにするか」
拓斗は上機嫌で、秋也に言葉を投げた。
活きのいいアサリが手に入ったのだ。
むろん、玲も交えて、三人で食卓を囲むつもりでいた。
以前こしらえた時、おいしいおいしいと好評だったリゾット。
玲は猫舌だから、ちょいと冷めるまでいただくワインはどれにしようかと考えを巡らせていた時、意外な言葉が秋也から返ってきた。
「パエリアの方がいいんじゃないか?」
何だとぅ、と拓斗は秋也を見た。
まさか、口ごたえしてこようとは。
「シーフードなら、リゾットよりパエリアの方が美味い」
「作るのは俺なんだ。文句言うな」
「食べるのは俺なんだ。意見くらい聞け」
「てめえ、スペイン贔屓だからパエリアとか言ってるだけだろう」
「お前こそ、イタリア贔屓だからとリゾットを押し付けるのはやめろ」
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