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貴方が僕を捨てるまで

依月が 屋上で煙草を吸うのは、 決まって昼休みだった。 俺が居ても気にせずに 毎日吸っている。 『また煙草ですか?』 三年担当のはずの この教師と俺は 密かに付き合ってたりする。 「いいだろう? 別に」 さして 気にしていないようで 一度学年主任に 注意された時も 確か同じ返事をしていた。 『吸い過ぎは 体に毒ですよ』 校内では一応敬語にしている。 何処で誰が 聞いてるかわからないからな。 「心配してくれんだ? 零愛が言うなら 少し減らそうかなぁ」 おどけたような そぶりをして煙草を 携帯灰皿に押し付けて消した。 『そんなんじゃないですよ』 プイッと顔を背けた。 十五分で 予鈴が鳴ろうとしている。 『俺、行きますね』 次の授業は 大嫌いな現社だが あの教師は一分でも 遅れるとネチネチと説教するから 時間に余裕を持って 教室に行くのが賢明だ。 「次、現社か?」 わかっているらしい。 『そうです、 笹原先生も五時間目 遅れないようにしないと 先輩たちが困りますよ』 じゃぁお先にと言って 屋上のドアをガチャンと 音立てて閉めた。 ★★★★★★★★★★★ 所変わって此処は 依月のマンション。 「ただいま」 時刻は午後十時、 依月が帰って来た。 『お帰り』 テレビを見ながら 振り向きもせずに応えた。 明日が休みなこともあって 泊まりに来ているんだけど 最近、違和感を 感じる時があるんだ。 多分、いや確実に依月は 何かを隠してる…… でも敢えてそれは 聴かないことにした。 だから依月が 俺を捨てるまで 傍に居ることした。

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