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『ビックリ箱』3※
「あー可愛いー……襲っちゃいたいくらい可愛いー……言葉で言い表せないよ……どうしてそういうことするかなぁ……天くん……」
おいでおいでと手招きすると、ちょこちょこと近付いてくる天に盛大に萌えた。
最接近したトナカイを抱き上げてベッドに横たえる。
当然の流れだった。
「え、あっ、……潤くんっ」
「これは僕のために準備してくれた、って思っていいんだよね?」
「あ、あの……、うん。 まぁ……」
「最高に可愛いことしてくれたね。 ありがとう。 抱いていい?」
「え!?」
目視による可愛さと、フェロモンによって崩された理性が潤の口調を強めさせた。
矢継ぎ早に口説かれた天は、潤のコートを握って頬を染めたその瞬間、欲情による濃厚なフェロモンを放った。
「潤く、……んっ」
「…………ごめんね、我慢できない」
「ん……っ……」
狼狽える唇を鮮やかに奪い、布地の上から下肢をまさぐる。 これは既製品であるが故、触り心地はそれほどよくなかった。
潤が生地から見繕い、短期間で仕上げた天専用のハムスターの着ぐるみの方がまだ品が良い。
舌を吸い上げて絡ませると、甘やかな嬌声を上げる天のせいで脳が痺れるような感覚に陥る。
フェロモンを間近で嗅ぎ、脳と下腹部にどんどんと欲望の波が押し寄せてくるなか、頭の中の冷静な部分が今年の天の誕生日プレゼントを決定した。
何度も顔の向きを変え、性急に口腔内を舌で犯していく。
「んっ……潤、く、ん……っ……くるし、……っ」
唾液の交わる音に卑猥さを感じた天が、唇を少しだけ窄めて抵抗の意思を見せた。
ちゅっと音を立てて離れてやると、ふぅ、ふぅ、と小さく呼吸を繰り返す。
小柄で、顔の造りもそれっぽく、ちまちました動作の天は抜群に着ぐるみが似合うので、頬を上気させていてもどこか汚してはならないもののように映った。
──ま、手出さないなんて無理なんだけどね。
いつでも愛でていたい対象がこんなにもそそる格好をしているのだ。
ついつい、熱く膨らんだ自身を天の太ももに擦り付け、もっと先を望んでいる事を分からせようとしてしまう。
「あれ、……天くん首輪してるの?」
「あ、あぁ、……うん。 発情期もうすぐだから予防のために」
「そっか、次は十二月だって言ってたよね」
「うん。 なんか周期がバラバラになってきてるんだよな。 自分で感覚的に気付くようになったからまだいいんだけど」
「周期がバラバラに? そうなの? なんで?」
「うーん……フェロモンの分泌し過ぎ? ……なんてね」
なんといやらしい響きだろう。
早くも衣服を脱ぎ去っている最中だった潤には、心当たりがあった。
発情期を選ばず、互いのスケジュールが合う土日はほぼほぼ天と過ごしている。 潤が毎週のように天を欲情させ、フェロモンを促し、αの性器で天の秘部を度々塞ぐ事で、彼の体内が僅かずつ変化しているのかもしれない。
可愛らしいトナカイは呑気にフフッと笑っているが、将来のために変化しつつある自身の体についてはきっと深く考えていない。
あまり重たいものは持たないように言わなければ。
足先が冷えると血の巡りが悪くなるので、日頃から温かく過ごすように気を付けてもらわねば。
舞い上がったため大きな口は叩けないけれど、こんなにもペラペラなトナカイコスチュームで潤の帰りを待つのは、今年で最後にしてほしい。
「天くん、……自分の体、大切にしてね?」
「んっ? なんで急にそんなこと……?」
「今日天くんに会えると思ってなかったから、とっても嬉しかったよ、僕。 でも天くんは後々、一人の体じゃなくなる。 無茶はしないで?」
「え……っ? 何? 俺なんかいけない事した?」
「ううん、違う。 僕は天くんの事が大好きなだけ」
「んー?? 潤くん相当疲れてんな? 会話が出来てないもん」
将来を予感させる天の微かな変化が、ただ感慨深かった。
おいでっと両手を広げ、年上らしく潤を寝かしつけようとする天のフェロモンの種類が変わったのが分かる。
だが癒やしのフェロモンを嗅いでも、一度滾った欲はそうそう鎮まらない。
「今からもっと疲れることするのに、寝てられないよ」
「…………っ!」
言いながら、首輪の上からうなじを食もうと牙を立てる。 肌に到達しない歯痒さにより、直後α性の本質を漲らせた潤の理性は見事に飛んだ。
その後、年下扱いされて機嫌を損ねた体にし、朝まで天トナカイを可愛がった潤の大人への道は……まだまだ遠い。
2020 *".✩:*☆ Merry Christmas ☆*:✩."*
潤♡天
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