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第24話
「トキさんは旭陽が生きてる事知ってたのに、何で教えてくれなかったの?」
「俺が、言わないでくれって頼んだ」
シオンの目が何故なのか問いかけている。
「前のようにおまえを守れる自信がつくまではって思った。でも、正直言えばおまえが俺を忘れて幸せに普通の生活してるなら、それでもいいかとも思った」
旭陽は悲しそうに笑うと、シオンを見つめた。
「忘れるわけ……忘れられるわけない!バカなの⁈」
そう言ってシオンはまた泣いた。
「うん……ごめんな。そのネックレス見て違うって分かったよ。大切に持っててくれたんだな」
旭陽は愛おしそうに、シオンの首にかかっているネックレスに触れた。
「俺は記憶が戻ってから一日たりともシオンの事、忘れたことはなかったよ」
旭陽はシオンの額にキスを落とす。
「僕だって……旭陽の事を思って……毎日、生きてますようにって、お祈りしてた……」
そう言ってそっと、旭陽の頬の傷を撫でた。
「前ほど男前じゃなくなっちまったけど、勘弁な」
「大丈夫、元々たいして男前じゃないから」
クスリと笑うと、旭陽の首に腕を巻き付けた。
「えー?そこは、否定しろよ」
「生きていてくれたなら、顔なんてどうでもいい。これからは、僕が旭陽の右耳になるよ」
旭陽は嬉しそうに笑みを浮かべると、シオンの肩口に子供のようにグリグリと顔を押し当てた。シオンの肩口に濡れた感触があり、旭陽が泣いているのだと分かった。
その時、部屋の扉からカリカリと何かを引っ掻くような音が聞こえた。
「クロウだ」
シオンは体を起こし、扉を開けてやるとクロウは、「ニャン」と一声鳴き、中に入ると当然のようにベッドに乗り真ん中で丸くなった。
「そうだ、これ」
クロウの首輪にしていたネックレスを外すと、旭陽に付けてやった。
「クロウには新しい首輪買ってやらないとな」
そう言って旭陽はクロウの頭を撫でた。
「ねえ、旭陽……もう一回しよう?」
悪戯っぽくキスを仕掛けると、昔のように妖艶な笑みを溢した。
二人は重なりベッドに倒れ込むと、クロウは迷惑そうな顔を浮かべ仕方なくベッドから降りた。
それからクロウは、門の支柱の上に乗る事はなくなった。今思えば、クロウもシオンの気持ちを察し、共に旭陽の帰りを待っていたのかもしれない。旭陽が帰ってきた今、待つ必要がなくなったという事だろう。
そして旭陽はそれ以来、柿原家の住込みのボディガードとして生涯シオンの側にいる事を約束した。
旭陽はずっとシオンに愛の言葉を囁き続け、シオンもまた、旭陽と共に生きていける幸せを噛み締めた。
こうして、互いに生きて側にいる。どちらが欠けても、幸せなど成り立ちはしないのだと、2人は知った。
互いの手を取ると、
『この先、絶対にもうこの手を離さない』
2人は共にそう誓った。
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