1 / 2

霧緒と詩のバレンタインデー。

「これ、本命っぽいなぁ……」 丁寧にラッピングしてある小さなプレゼントは、なんだか市販の物ではない気がした。 そんなプレゼントが2つ。 今日は2月14日のバレンタインデーだから中身は当然チョコだ。 そしてその他に義理チョコが13個という現状に、ご立腹の彼氏くんが目の前にいた。 どうもどうも、萩生詩です。 で、ここは宮ノ内家のリビングでして、今日は霧緒に学校帰りに直接うちに来いと言われていたので来ています。 「一応貰うときに言ったんだぞ。食べられないかもって」 「かも……じゃないけどな」 「そうだけど、ハッキリ言うのもなんか申し訳ないじゃん」 「ゴミ箱行きだって言えばいいのに」 「んなこと言えるかー!」 「はいはい、とりあえず全部没収な。本命も義理も手作りばっかで……コワ……」 「霧緒は貰わなかった?」 「いらないって断った」 無表情で冷たい言葉をさらりと言うこやつは感情がないのか。 一体何人にそのセリフを言ったんだろう。 俺より遥かにモテるクセに、バレンタインに関心がないく、その上手作りと言うワードが大嫌いなのだった。 どうやら過去に女子の手作り弁当を食べ、食中毒で入院したことがあるらしく、手作りは完全にトラウマになっているらしい。 ま、まぁうちのばあちゃんのとか、俺の作った料理は普通に食べてくれるから、それはそれで嬉しいんだけど。 そう思いながら、カバンから一つの袋を取り出した。 なんだまだあるのかよと言った表情を浮かべている霧緒に、両手でそれを差し出した。 「はい。これは俺から霧緒に」 「……」 「捨てないでちゃんと食べてくださいよ?」 「……ン、有り難う……」 お、おぉ?ちょっと嬉しそうですか? 眉間にあったシワがなくなりましたな。 よーしよし!良かった!良かった! 「今回はチョコマカロン作ってみたんだ。甘過ぎたらゴメン」 市販のラッピングの箱に一列に摘めたマカロンは、全部茶色だから見栄えがいまいちだけど、美味しくできたと思う。 カサカサと包装紙を外し箱を開け、マカロンを摘まみ、口に放り込む様子をドキドキしながら見守った。 「……うん、美味しい」 「おー!やったね!そうだろそうだろー!沢山お食べよ!」 やっぱり美味しいって言って貰えると嬉しいな。 それが好きな人なら尚更で、顔のニヨニヨがとまらない。 「詩、顔が緩みすぎて、気持ち悪いぞ」 「だって仕方ないだろ。美味しいって言われると嬉しいんだからさ。あ、ご遠慮なさらずどうぞ食べて下さい」 「……うん」 2個目を食べるのを期待して、霧緒を見つめていると、どうしたことかイケメンの顔がどんどん近づきアップに…… (あ、キスされる) そう思って、きゅっと目をつぶった。 つぶったのに、予想した感触はなくて不思議に感じて目を開けてみると…… 「う、ひぁ……」 変な声が出てしまった。 唇が触れるくらいの距離に霧緒の顔があって、寸止め状態にされている。 長い睫毛が瞳がじっと見てるし、整った唇が吐息が全てが色っぽくて見とれてしまう……と言うか!ヨダレが出てしまう。 「な、な、な、なんなん」 「……キスしたいなぁと思ったんだけど」 「は、はひ……」 「激しいのでもいい?」 「は」 「で、スゲーーー濃厚なやつ」 「……」 「チョコ味だし?いつもよりも甘いぞ」 「……チョ、チョコ好きなんで!だだだいじょうぶ……ン……っ……!」 ンぐ……話してる途中で口を塞がれましたぞ。 宣言通り濃厚で情熱的な大人なキスをいただきました。 厚い舌がチョコ味でいつもよりねっとり絡む感じがするし、霧緒の零れる吐息が超エロいです。 ぬわわ……っ!全身がざわざわする! ながったらしくずっとチュッチュッしたから、興奮して、俺のあれが?あれに?なって大変になってしまった。 だって俺……キスだけで反応しちゃうんだよー! うう…… チョコあげたし?この先おねだりしてもいいよね?って……こうなることはもう計算の上なのかもしれないけどさ!我慢できないっ! 「うあぁ……食べられたい食べられたいー!食べて下さいーーっ!」 へなへなになりながらも、霧緒にしがみついてそう叫んだ。 我ながらムードも色気の欠片もない。 その言い方~と頬っぺたをつねられたけど、その後、ちゃんと美味しく頂かれた。 霧緒、笑ってた。 ス……スッゴク……スッゴク優しくて、もう赤面するくらい恥ずかしかった。 あ、とっても気持ち良かったです。 甘ったるいくらいのバレンタインだったよ! おしまい。

ともだちにシェアしよう!