1 / 22
第1話
ひらひらと桜が舞うと同時に今日から新しく始まる日で高校生活をどんなものにしようかとこれからの楽しみで密かに心が踊る小谷木優 がいた。
大家族でいつも賑やかな家に自分の部屋がなく落ち着いた時間を過ごす事が出来ないため態々寮のありスポーツに力を入れている高校へ進学した。家族に不満はないが自分の部屋がほしい、そして身体を動かしたいと緩い理由だが気持ちが高まっていた。寮に入れるのは希望した人のみであるがここは贅沢な程に生徒に一人部屋が与えられるらしい。
高揚した気持ちで校舎前に掲示されたにクラス表を確認しようと近寄るが大勢の生徒と優の153センチと小さい身長では確認出来ずにいた。中学生の時中々伸びずにいたので高校生になった今これからが成長期なのだと信じている。
人だかりを割って入った所で押しつぶされる事が目に見えているので自力で見ようと跳ねて見るがやはり無理だった為、横にいた自分より背の高い生徒に見てもらおうと声をかけようとした矢先、先程まで生徒の背中しか見えなかったのが奥の掲示板が見えたことに驚きクラスを確認というより後ろを振り返る。
「だ、誰!?」
優の目線には胸元のネクタイが見えここの生徒でありその人物に持ち上げられていた。
「掲示板は見えたかな?」
追求は後にし今逃したら入学式が始まりクラスは解らずじまいになってしまうので急いで掲示板を確認し1年B組に名前がありほっとする。
(やっと確認出来た。というか早く降ろしてほしいな)
「あのありがとうございます、助かりました。でも早く降ろして貰えます?」
男は素直に降ろしてくれたと思いきや肩に触れ振り向かされお互い顔を合い、目の前にサラサラした襟足まである金髪頭の明らかに優より背の高い男がいた。
「君の名前を教えてくれ」
「小谷木優です」
ああ、子ヤギか呟いたのを聞き逃さず、如何にも動物の子ヤギの方を連想したのだ少しカチンとした。
「小さい谷に木でこ!や!ぎ!」
「だからこやぎちゃんだろ?可愛いじゃないか」
(なんだ、こいつ。初対面で絶対バカにしてる!親切だと思った俺がバカだったわ!小さくて悪かったな!のっぽめ!)
心の中で悪態をつきながら早く離れたいと思うのにがっしり肩を掴まれ動くことが出来ない。
「僕は君の為に生まれてきたんだ。これは運命だ。食べてもいいかい?」
(生まれ?運命?食べ?は?)
食べるという言葉に対してはどう受け止めて良いかわからないが、よく見れば顔はよく身長も高いので絶対モテそうだ。そんなイケメンに女子であればイチコロであろうが何せ優は男である。
全身にゾワゾワした物が身体中に走りときめきもなくただ目の前の変人を前に顔を顰めた。
その男はひざまつき優の手に優しく持ち自分の口元に持っていき口付けた。
優の身体は硬直した。
「ああ、やっぱりしっくりくる。そして少し日に焼けているのにすべすべした肌。童顔で小さい」
「俺は男だ!お前は変態だな、今すぐ通報しようか!?」
証明するにはこれしかないと制服のYシャツをたくし上げた。
そして気づいた。たくし上げたYシャツを学校とはいえまだ他の生徒が居て今までのやり取りを見ていたことに。そして同時に前で立っている自分の方が1番の変質者ではないかと。
焦るようにシャツを戻し視線を戻すと下にいた変人男はいつの間にか立っていて逆に優は男を見上げ縮こまる。
「な、なんだよ・・・」
「大胆なんだな、こやぎちゃんは。それはまた今度にしよう。」
次から次へとドツボにハマる優はもう付き合い切れないと立ち去ろうとする前に変人男の方が行動が早く、髪の毛にちゅっと軽く口付けをしてさっと優しく頭を撫でられてから2度目の硬直した。
「また会おう」
固まる優とやり取りを見ていたい生徒達を残し背を向けて去っていった。
ともだちにシェアしよう!