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第22話

 良い出会いをしたと舞い上がる気持ちと一緒に身体が軽く感じた。借りたハンカチをポケットの奥底まで入れて走り出す。  帰りが数秒でついたように思えて玄関に座り、鼻歌歌いながら思い出し笑いを浮かべ靴紐を解いているときだった。 「イイことあった?」 「そりゃあもう可愛い女のこ…うわあああ!?」  質問されたら答えるという反射で確認しない自分が悪いのか音も出さずに背後にいる人が悪いのかも相手が誰なのかわかってしまった優には今はどうでもいい。驚きと1番会いたくない人物に会ってしまい声が出なかった。 「女の子とランニングデートでもした?…小谷木ちゃん?」  返事がない優に少し近づき端正な顔が視界一杯に広がる。全身に鳴り響くドドドと地響きのような大きい音に支配されて身体が動かなかった。前にも似たような感覚で何故か朝風の前だと金縛りにあったように動くことができないのだ。 「怯えているのかな。ああ、怯えてる姿も可愛いよ。食べたい」  そう言って更に距離が近くなり、唇に目線がいってしまいこのままだとキスされると思い、朝風の思い通りになってはいけないと動けと心の中で何度も唱えると身体がやっと思い通りに動き、朝風を押し返していた。押し返された本人は少しびっくりしていたがすぐににやりと笑った。 「キス…また期待した?」 「〜っ!!!や、やめろよ!揶揄うのもいい加減しろ!!!」   先程よりドンと強めに押し返したのにこいつは一ミリもびくともしなくて動かなかったことに驚いてそんなに力の差があるのかと考えたがその一瞬、朝風のキスによって塞がれた。 「っ!?」 数秒なのに息の吸い方が解らない程、酸欠になり苦しくて気絶しそうで、頭がぼんやりしてくる時だった。 「辛い?可愛いねぇ〜僕以外でそんな顔見せちゃダメだよ」 さらりと下唇をなぞられるとゾクゾクと全身波打ち身体が倒れそうにるなる直前、朝風に支えられる。 ぼんやりする頭でも嫌な奴の顔は目の前にあり自分は睨め付けたつもりでいるのに微か笑っているように見えたが直ぐに困った顔を見せた。 「ああ。君の嫌なことはしないと決めたのにやってしまった。」 いつの間にか片腕は腰に回し、もう片方は優の腕を持ち、チュッと大きい音を態と出すよう手の甲へ口付けをして反応を楽しんで見える。 これが朝風の『いつも通り』なのだろうか。 意識も元通りになってきて、睨みつけると鼻で笑って嫌味たらしい笑いを向けてきたが、本日2度目のキスは深くて優しい口付けだった。    

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