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第36話 ポメラニアンのちオオカミ 3
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うつ伏せでぐったりとベッドに眠る茜。布団を捲ると、茜の柔らかく白い肌は俺が何度も叩いたせいで濃紅色になって痛々しい。
けど・・・
控えめに言って、めっちゃくちゃヨかった・・・!!!
尻を叩かれてひんひん泣きながらぐちゃぐちゃに感じまくってる茜・・・史上最強に可愛かった・・・!
茜の肩が隠れるくらいまで掛け布団を引き上げ、少し腫れた瞼を指で撫でると、小さく顰めた顔を枕に埋めている。
う~ん、可愛い。
俺はもう末期かもしれない。茜の仕草一つ一つにときめいて胸が苦しくなる。
同じように運命を拒絶して俺を選んでくれたこと。
こんなにも茜が俺を好きになってくれたこと。
ただ見ているだけでよかったあの頃の俺じゃ想像もつかなかった。聡明で綺麗で完璧なαだと思っていた茜が、歪で淫猥で・・・ああっ!可愛い!!
両手で顔を覆い、萌えすぎてこのまま死んでしまいそうなほど息苦しくなる。
正直、藤くんに番がいたのは俺にとってはラッキーだった。
茜の運命の相手に大切にしたい誰かがいることに安心しちゃってる俺は、つくづく小さい男だよな~・・・。
ヒートが来ない体の俺に自信なんてあるわけない。Ωはαの子を孕みたいと思うのが本能。茜の本能を満たしてやれない俺は、いつかきっと離れなきゃいけなくなる日が来る。
それまででいい、必要とされていたい。
茜の年齢を考えると、遠くない未来にその日は来るだろう。その時に、後悔だけは残したくない。
動く気配のない黒髪に指を通し、ベッドから降りようとすると
「どこ、行く・・・?」
掠れた声で俺の腰にしがみついて来る茜。
「起きてたのか」
「んーん、今起きた。・・・それより、満身創痍の俺をほっといて、どこへ行くのか聞いてる」
「あー。水、持ってこようかと」
「・・・後でいい。ここにいろ」
「でも、喉つらいだろ。なんか飲んだ方が」
「いらない。いちいち言わなきゃわからないのか。それとも言わせたいだけか? ・・・そばにいて欲しい」
腰に回った茜の腕が ぎゅうっ と締まる。
なあ、マジで俺を萌え殺しにかかってくるのはやめてくれよ!
布団の中に入り直しぎゅっと抱きしめると、胸元でスリスリと動く茜の頭部。
あの時自分に『追いかけない』という選択肢があったことにゾッとしてしまう。誰にも渡したくないくせに、いつか手放さなければならないっていう矛盾。俺は一生茜だけを想っていく自信だけはある。それだけじゃ茜を幸せにできないこともわかってる。
「藤」
「は・・・?」
「藤の番は、莉央と言ったか」
「あ・・・あー、そうだったと思う」
腕の中で違う男の名前を呼ばれただけでムッとしてしまう心の狭い俺。
こんなんでいつか手放せるなんて出来んのか・・・?
「莉央がいなくなった理由がわからないと藤は言っていたが、そんなに難しいことでは無いような気がする」
「そうか? 番になるほど好きな相手から、自分から去るんだぞ? やむにやまれない事情があったんじゃねーか?」
「お前が俺に『藤のところに行け』と言ったのも、やむにやまれぬ事情だったのか?」
「そりゃそうだろ。αとして機能しない俺じゃ・・・」
「くだらない」
はあっ!?
く だ ら な い !?
そこは俺が悩みに悩んでる部分なんだぞ!茜のためを思うならって・・・くっそ、人の気も知らないでシレッと言いやがって。
「自分が気にしている事をくだらないと言われて腹が立つか?」
「当たり前だろ」
「そうか」
苛立つ俺に、茜はクスクスと可笑しそうにする。
「なんで笑うんだよ」
「綾木が気にしていることは、俺にとってはそれほど重要じゃないということだ」
「でもな・・・」
「俺の為などと勝手にお前の美学を押し付けるな。俺は綾木が好きだ。そばにいてくれたらそれでいい」
それじゃ茜は幸せになれないだろ。
「莉央も綾木と同じだったんじゃないだろうか。何があったかは知らないが、藤の為を・・・と思って去ったんじゃないか?」
「・・・どうかな」
それを美学と言えるのかはわからないけど、もしそうだったとしたら莉央くんの藤くんへの想いは決して軽いものじゃないはず。きっと今も彼を想い続けているはずだ。
「お前の独り善がりの優しさは要らないぞ。どうせならずっと隣で俺に優しくしてろ。いなくなるのは許さないからな」
胸元に埋まったままの茜の声は少しだけ震えていた。
「綾木がいてくれたら俺は幸せだ。・・・藤もそうなってくれたら、もっと、いい・・・」
フェードアウトして静かな寝息に変わる茜の声。
どうしてそんな風に言ってくれるんだ。
俺の予想を遥かに超えて、お前は俺を想ってくれる。真っ直ぐに伝えてくれる。
誰かの幸せを願う純粋な心も持ってる。
なあ茜。俺はお前に相応しくなれるかな。
ずっと隣にいていい資格、持てるようになるのかな。
きっとそれを決めるのは俺じゃない。
全ての権限は茜にあるんだろう。
「うう~っ、痛い・・・腰も尻も、全身が痛い~」
朝目覚めた茜はベッドから起き上がれず、裸のままで布団に籠る。
長期間引きこもっていたこいつにしたら1日くらい風呂に入らなくても平気なのかもしれないけど、さすがに昨夜は俺が身体中舐め回したし精液に塗れたままじゃ汚い。
「シャワーくらい入ってこいよ。何なら俺が洗ってやるからさ」
無理矢理布団を剥ぎ取ると
「わっ、ちょ・・・いきなり捲るな!」
茜は体を丸めて自分の膝を抱える。
明るい部屋で、自分が吸ったり噛んだりした痕と乾いて薄ら張り付く液体が綺麗な肌を汚しているのを改めて見ると、汚いと思うより先にムラムラと厭らしい感情が湧き上がって来る。
小さく丸めた背中に寄り添うように横になり、項に口付けると
「あ、あやき、おれ・・・今日は、無理・・・」
振り返った茜の顔は、怯えた子羊のようだ。
「えへ、勃っちゃった♡」
ボトムスの中の屹立を割れ目に添わせると、ビクッ と肩を上げた茜はたちまち飛び起き
「シャワーしてくる!」
と言ってバスルームへと直行する。
フフ・・・、ビビってる茜も可愛いな・・・。
と、ひとり悶える俺は、やはり末期だとつくづく思う。
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