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第43話 euphoria 3
力が入らない脚を綾木に蹴り広げられ体勢が崩れ床に両手を着くと
「もしかして、フェラしながらイッちゃった?」
股間を凝視してくる彼に、口に出して欲しくないひとことをズバッと言われてしまう。
「あ・・・ち、ちが・・・」
どうしようもないほど恥ずかしくなり否定するが、ボトムスのシミはカウパー腺液だと言い訳できない白い粘り気を含んでいる。
へ・・・変態だ、俺は。
前は綾木に尻を叩かれてイッてしまったし、今回は咥内に射精されただけで・・・!
綾木にされる全てに悦んで、綾木にしてやることにも悦びを感じて。
もうこいつとなら見つめ合うだけでも快感になってしまいそうな自分の体が怖くなってくる。
こんな体でもしここにいるαが綾木でなかったら、それでも俺は見境なく求めてしまいそうで、何よりもそれが怖い。
「どうしよ、あやき。俺、こんな・・・」
「うん。すげえヤラシイ体だよな。俺と一緒にいたら茜はずっとこのままだ」
このまま・・・
「けど安心しろよ。茜が発情する時、俺は絶対一番近くにいるから」
「そんなのっ、抑制剤を飲んでいたっていつフェロモンの強いαにエンカウントしてもおかしくないのに!そうなったら俺は、」
「絶対傍にいるって言ってんだろ。これから先、お前をひとりになんてするつもり無いから。茜が嫌だって言ってもずーっと付き纏ってやる。だから、いつでも好きなだけ乱れていいよ」
「乱れて・・・って」
「茜が誰に出逢おうが、誰で発情しようが、俺以外には触らせないから」
綾木に抱え上げられてソファに乗せられ、トップスの上をスルスルと彼の手が滑る。
余すところ無く上半身をなぞられて、もどかしいのに気持ち良くて、ぬるぬるの下着の中で膨らんだままのそこが ピクン と小さく反応する度に腹の奥が熱くなる。
もういらない。
前戯だとか愛撫だとか、そんなものいらないから。全部すっ飛ばして早く・・・
「はやく・・・あやきので奥、ぐちゅぐちゅしてよぉ」
堪えきれずに涙目でそう訴えると
「ホント発情した茜、凶悪過ぎる」
ようやく下半身を晒されて、押し入ってくる圧迫感で視界がチカチカと暗転と明転を高速で行き来する。
いくら濡れそぼっていたとしても、綾木の大きなそれを受け入れるときは やはり痛みが伴ってしまう。
けれど、今ではもうその痛みさえも快感の一部になっている体は素直で、とろりと腹の上に液だまりを作る白濁が何よりの証拠。
浅いところに抽挿を繰り返した後 ぐぐっと押し込まれると、発情期にだけ開かれるΩの子宮口に綾木の先端がぴたりとはまって、内臓にまで鳥肌が立ったようにゾワゾワと体が震える。
「ひ・・・、ぃあ、・・・あ」
「ここ、茜のポルチオ。わかる?」
「わかっ、・・・ぁ、はっ、」
わかる。けれど息をするのが精一杯で口の形を「る」と窄めることが出来ない。
くそぅ。このむっつりスケベめ。綾木も俺と同じで三十路まで童貞だったくせに・・・こういう知識だけ豊富なのは何故だ!
「茜・・・、気持ちい?」
不安そうに見える表情で綾木が聞いてくる。
以前だったら気にもとめずただ頷くだけだったかもしれない。
不安げな表情の裏にあるものが何かを知ってしまった今、彼のそういう知識の全ては番として引き留めておけない俺の体を 快楽で少しでも繋ぎ止めておきたい意図があると見て取れて・・・
綾木のムッツリなところも、最中に気持ちがいいかとわざわざ聞くような不粋さも、なんだか可愛くてしょうがなくなってしまう。
「なあ、言ってよ。気持ちイイ?」
「や・・・っ、ひッ・・・いい、イイからぁっ」
奥を抉るように腰を左右に揺らされて、内壁がぎゅうぎゅうと綾木の屹立を押し出そうと勝手に収縮する。
いくら表情や言動が可愛くても、こいつの中身はやっぱりαで、捕らえたΩを陥落させようと必死になる様はどこか狂気を孕んでいる。
綾木の狂気に飲み込まれるのを望んでいる俺もやはりΩでしかない。
「欲し・・・ぃ、奥に、あやきの、いっぱい・・・」
綾木とでは子供は作れないとわかっていても、この行為が全く意味の無いものだとしても、真似事でもいいからと求める俺の様もまた狂気じみているのかもしれない。
「あや、き・・・ぃ、・・・あやきっ、すきぃ」
「うん、俺もだよ。茜」
もう何時間こうして繋がって、何度果てたかもわからない。
中が綾木ので満たされて飲み込めず溢れる白濁は泡立ち、部屋には彼の濃いαフェロモンが充満している。
いつになく濃厚なこの匂いに脳の隅々まで犯されて、繰り返す挿抜でバカになったように快感しかない体で、俺はこの時まだ気付けなかった。
綾木が最後に吐き出した時に大きく膨らんだ彼の屹立の一部に。
そして、消えないことになる項の痛みにも。
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