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第42話 euphoria 2
そして待ちに待った俺の発情期の夜。
上がる体温と荒くなる息、腹の奥はドクドクと脈打ち、まだどこにも触れられていないのに下着の中は既に濡れて不快なほど。
早くめちゃくちゃにして欲しいと はやる気持ちを何とか抑えて、俺は綾木に酒をすすめる。
が
「イヤ。俺はいい」
と綾木は頑なにグラスを拒否する。
「なぜ!? 俺はこの日のために、お前の生まれ年(俺の生まれ年でもあるが)のヴィンテージワインや古酒をこんなに取り寄せたのに!」
「『この日のため』って今日はなんの日なんだよ。至ってふっつーの日だと思うんだけど」
ハア、と大きな溜息を吐く愚か者。
バカか綾木。綾木バカか。
今日はお前のタガが外れる記念日になるかもしれないんだぞ!
「ふ・・・、では白状しよう。鈴木医師から助言を頂いたのだ。酩酊し理性が効かない状態ならば、もしかしたら綾木のラット化が見込めるかもしれないとな!だから・・・」
「酩酊状態で勃起できると思えねんだけど」
「ぼっ・・・?」
・・・き?
そういえばそうだ。俺はなんて初歩的な事を見逃していたんだ。冷静に考えれば、鈴木医師はあくまで理性が効かなくなるという状況を言っただけで、タガが外れる=綾木の心的ストレスが著しく低下もしくは急激に増加する条件を言っただけではないのか・・・?
それを安易に性交に直結してしまったのは俺で、これは単純に大きな勘違い と言うやつなのでは・・・
性交や番の契約以前に、俺は自分の事しか考えていなかった。精神的なものが原因でラット化しないのならば、まずは綾木の心のケアを優先するのがパートナーとしての務めだったのではないか?
改めてそう考え直すと、あまりに自分勝手な己の行動に腹が立ち情けなくもなってくる。愚かなのは俺の方だ・・・
「あ、あやき・・・が、好きなのにぃ。どうして、こうも上手く、できないんだろ・・・」
「は? ちょ、茜っ?」
ボロボロと涙が溢れてきて、俺の顔の横で行き場のない綾木の両手があたふたと動く。
発情のせいで感情のコントロールができない。発情のせいだけにはできない欲深さで自己嫌悪まっしぐらだ。
だというのに体は綾木を求めて疼き、感情とは別のアクションを起こしたがる。
Ωというものは、なんて面倒臭い生き物なんだ。
その手に唇に、体中を乱して欲しくて堪らない。αの熱が欲しくて、のぼせたように頭の中が霞がかる。
「茜、辛そうだぞ。触っていいか?」
綾木の指先が頬に触れ、ヒヤリとした感触にゾクッと後ろ首が粟立つ。
なぜ聞く。お前の好きにしていいのに。
・・・ああそうか。綾木が求めてるんじゃない。俺がそうして欲しそうに見えているんだ。
いつも綾木に触れられるとそれだけで気持ち良くなって、全てを委ねたくなって快感に溺れて。
だったら綾木は?そもそも俺に触れるだけで満足しているのだろうか。
「俺が綾木に触っても、いい?」
吃驚したように小刻みに瞬きをした綾木は、「いいけど・・・」と戸惑いを見せる。
ソファに寄り掛かる綾木に跨り口付け舌を絡めるが、彼がしてくれるように器用にはできなくて、それどころかこの唾液の味にすら酔ってしまいそうになり、攻めているはずの自分の口の端からは吐息と共に小さな声を漏らしてしまう。
「どうした。なんかすげー積極的なんですけど?」
俺だって男なんだ。綾木にも気持ち良くなって欲しい。自分のことばかりだったから、お前にも何かしてやりたいんだ。
「んぅ・・・っ、は・・・ぅ」
してやりたい・・・のに。
綾木の咥内に舌を入れているだけでもイキそうなほど気持ちがいい。しくじった。発情期でなければもっと上手くできたかもしれないのに。
「んぁ・・・」
結局押され気味になってしまい、離した唇を割って綾木の指に侵略されてしまう。
舌を撫でられ ぐにぐにと指で挟まれ、爪の先で上顎を柔く擦られ、漏れ出る喘ぎが震える。
「あ、や・・・」
「うんうん。くちんなか、気持ちーな?」
「ん・・・」
喉で返事をすると、綾木の瞳の色は雄の色気を纏ったものへと変わる。
シャツの上からでもわかる胸の突起を コリッ と弾かれ、俺は襲い来る射精感に身を縮め耐える。
「なんで我慢すんの?出さなきゃ辛いままだぞ」
「あ・・・あやきが、先に・・・イけ」
「なんで?」
「うぁッ、あっ、あ・・・っ、やっ」
左右の乳首を同時に摘まれ、無意識に腰をカクカクと前後に動かしてしまう。だめだ、このままではイッてしまう・・・!
必死で射精感を堪え胸に伸びる彼の両手を掴んで膝から降り、それを割ってボトムスの中心で隆起したそこへ顔を埋めると、普段綾木から感じることの無い 濃いαの匂いがする。もっともっとと求める俺は彼のボトムスの履き口に手を掛ける。
綾木の下着を引き下げると、自分のものとは比べ物にならない猛々しいそこが目の前で屹立しαの匂いを漂わせている。
最中に綾木から発せられるこの匂いをこんなにも濃く感じたのは初めてで、息を吸う度に鼻腔を満たす甘いフェロモンで目眩がしそうだ。
屹立を握り浮き出る血管に舌をあてると、ドクドクと脈打つのがわかる。
欲しい。これが・・・
「茜っ、そういうのしなくていいから!」
頭を押し返されて綾木の顔を見上げれば、余裕の無い表情がとてつもなく可愛らしく見える。
「したい」
もっとお前を追い詰めてみたい。余裕なんか微塵も無くなってしまえばいい。そして俺に溺れきってしまえばいい。
「俺は、綾木の体に触っちゃいけないのか?好きにしちゃだめ・・・?」
「うっ、・・・ダメじゃねぇけど・・・。 茜にそんなことされたら、持ちそうにねーし・・・情けないとこ見せらんない」
そう言って口元を手で隠す。
か、かわいい・・・!そんな風に言われて、大人しくやめてやれるわけが無いだろう!?
男としての征服欲が俄然出て来た俺は、綾木の屹立の先をパクリと咥える。
「あか・・・っ、待てって!」
「まはらい(待たない)。ふりゅ(する)」
こんな事をするのは初めてで、正直言って勝手がわからない。綾木が俺にしてくれるようにするしかない。
けれど口の大きさもアソコのサイズも違う為に、思ったように深く咥えられないし舌を動かすことも出来ないフェラチオ劣等生の俺。
それどころか、こいつの大きい亀頭が頬の裏側や上顎、喉の奥に擦れる度にゾクゾクと腰が抜けてしまいそうな快感が走る。これでは綾木を気持ち良くさせてやりたいのか自分が快感を得たいのかわからなくなってくる・・・
「茜っ、も・・・ヤバ・・・、ッ」
「んぅぅ・・・っ」
ぐっと頭を押さえつけられたと同時に膨らむ屹立から押し出すように流れ込む熱が、口の中に広がり喉の奥まで侵入してくる。
屹立を引き抜かれ、咥内に残った白濁を ごくん と飲み込むと、受け止めきれなかった白濁が溢れて顎を伝い床に落ちた。
「ぁ・・・は、」
甘い。味も匂いも脳みそが溶けるほどに。綾木は、αはこんな味がするんだ・・・
知らなかった。
「ごめんっ、大丈夫か?」
心配そうに頬を撫でてくる綾木を見つめ返すが、頭がぼうっとして何も反応を返せない。
しかし、すっかり抜けてしまった腰のせいで立つこともままならない自分の状況だけはわかる。
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