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第11話

(少し、暑くなってきたな)  まだ7月上旬とはいえ、夏の日差しは強い。  地面から立ち上る、土と緑の放つ香りと熱気も体を包む。  俺はこのとおり体力だけはあるからと、光一はさりげなく移動し太陽を背にした。  自分が作る日陰でもって、寿を暑さから守った。 (少し、腹が減ってきたな)  飲まず食わずで、もうすぐお昼だ。  この調子だと寿は、休憩も取らず食事も摂らずに探し続けるに違いない。  そこで光一は、クローバーの白い花に集まるミツバチを捕まえた。  その腹を裂き、蜜袋を取り出す。  真っ先に頭を潰して苦しまずに即死させることが、せめてもの謝罪だった。 (悪ぃな。今度おまえが人間に生まれ変わったら、ミツバチに生まれ変わった俺を殺して蜜袋を取ってくれ)  こうして集めたミツバチの蜜袋を10個ほど、光一は寿に手渡した。

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