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第1話

――オレには、好きな奴がいる。  相手は普段無表情だけど時々不意に笑ってみせたり、頭いい癖にテストでわざと手ぇ抜いてゾロ目、なんて点数を公開しつつもちゃっかりオレより高い点をとる幼馴染。顔は通りすがりの10人中8人が見惚れて残り2人はチラ見するくらいに整ってて、中学でもモテモテだった。  ただし、そいつ――弓弦は男だった。  ふとした時に弓弦を好きだと気づいて、メチャクチャ混乱した。なんで、いつから、なんて思ったけどほんとにいつの間にかの事で、気づいた途端数日はまともに顔も合わせられなかった。  それくらい、衝撃的で。  顔を見るだけで顔が熱くなりかけ、誤魔化すように周りと話す。声を聞くだけで体が固まりかけたけど、なんとか動かしてバレないように笑う。  男同士なんてダメだ、って思って気のせいにしてしまいたかったけど、少しでも意識してしまうと顔を見るだけで一瞬顔が赤くなってないかと不安になるし、声を聞くだけで自分の声が上擦りかける。  到底、気のせいには出来なかった。  幸い、オレも弓弦と同じくらいモテてたから、付き合ってしまえば忘れられるんじゃないかと思って、それ以降積極的に告ってきた女の子と付き合ってみたりもした。  付き合って、デートして、手を繋いで、キスをして。セックスもした。  女の子は可愛かったし、凄ぇ気持ちよかった。      だけど、1ヶ月くらい経つとなぜか涙を流しながら振られる。好き、という程でも無かったから傷つくことは無かったけど、なんで振られるのかオレにはよく分からなかった。よく分からないまま、また他の子と付き合い始める。オレは周りから女好きだと噂されるようになった。 ――けれど、何度繰り返しても上塗りされることはなく。  弓弦はオレの頭から離れてはくれなかった。

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