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番外編 貪る

※こちらの作品はエクレア文庫様より配信中の『竜の御手付き~蒼竜は愛し子への愛に溺れる~』のラストシーンから『蒼竜は泡沫夢幻の縛魔師を寵愛する』の始まりのシーンの間で削除してしまった、竜紅人視点の香彩への思いと情事シーンになります。どちらにも入れることが出来なかったので、最終話配信記念としてこちらにて投稿させて頂きます。お楽しみ頂けましたら嬉しいです。 【貪る】  中に放たれた精に、壮絶な快感を感じたのか、気を失っていく香彩(かさい)を見下ろしながら、竜紅人(りゅこうと)は堪らず身を震わせた。  かなり拘束した体勢を取っていた覚えがある。両膝を抱えた上に手を繋がれてしまえば、香彩は与えられた刺激からは、もう逃げることは出来ない。  そうして穿って奥の奥まで犯せば、自分のものである証の甘い香りが、ふたりをを包んで、竜紅の雄は香彩の胎内(なか)で再び硬さを取り戻す。 「……っ!」  幾度か突き上げて竜紅人は、今度は力の抜けた香彩の身体に向かって、精を放った。  腹に、胸に。  そして僅かな飛沫が、顔にまで掛かって。  ──……りゅ……や……だ、まだ……離さないで……。  ──あ……っん…!もう…らめっ…ぁあぁぁぁぁ!  愉悦で舌の回らない、香彩の喘ぎ声が耳に甦って、竜紅人の雄はびくんと震えながらも、白濁とした熱を香彩の身体に溢し続ける。  気を失い、くったりとしたその身体。  激しい情交で白い肌は上気し、薄桃色に染め上げられていた。点々と残る唇の鬱血痕が、己の精に彩られているのを見て、竜紅人は全身が総毛立つ程の興奮を感じる。  匂い立つ、壮絶なまでのその凄艶さ。 (……ああ、だめだ)  止められない。  ようやく自分のものとなり、自分を求めてくれたこの身体を。 (……もっと……)  (もっと……貪りたい)  欲のままに竜紅人は、香彩の唇を(なぞ)るようにして、舐める。もう今日だけで何度この唇に、こうして舌で触れたか分からない。  接吻(くちづけ)のし過ぎか、腫れ上がった濃桃色の唇を舐め回せば、香彩の唇は竜紅人の唾液で、てらてらと濡れる。  それは無意識だったのだろう。 「ん……」と、くぐもった声を上げながら香彩は、自身の唇を少し舐める仕草をした。  まるで与えられた唾液を、逃したくないのだとばかりに。  唇の隙間から見える、薄桃色した舌。  それがあまりにも甘そうで美味しそうで、竜紅人は堪らず、薄く開いた唇から舌を差し込んで、絡めて吸い上げた。  甘い。  香彩の身体がもう、何処も彼処(かしこ)も甘い。  その甘さ、甘やかさに頭がくらりとする。 「……ぁはぁ……んっ……」  唇を離せば、気を失っているというのに、香彩が色付いた吐息を漏らす。  その艶めいた声と息、そして濃い『御手付(みてつ)き』の香りが、竜紅人を惑わせ狂わせる。  上体を起こして竜紅人は、香彩の太腿に触れた。  力が抜けていて尚且つ、竜紅人がその身体をまだ割り開いている為か、目の前には、しどけなく足を開いている香彩の姿が映る。  内股に咲いた、いくつもの華を満足そうに眺めながら、竜紅人は少し体勢をずらして、香彩の右足を抱え上げた。  愛おしいのだとばかりに、竜紅人は香彩の足の指に唇を寄せる。そして一本一本を丁寧に舐めては口に含み、まるで口淫の様に舌を使って咥え込んでしゃぶる。 「ん……ふっ……」  足の裏、甲も丁寧に舌を這わせ、軽く甘噛みすれば、途端に上がる吐息混じりの淫声(みだらごえ)。  綺麗な足だと竜紅人は思った。  白く滑らかな肌に、形良くすらりと伸びた足だった。  所々に唇痕を残しながら、上へ上へと舐め上げる。ふくらはぎから太腿にかけて、刻印を刻み込んで、内腿に元々あった痕を強く吸い上げれば、香彩の白い肌にいくつもの、紅い華が咲き乱れていく。 「んんっ……」  足の付け根を舐めて強く吸い上げれば、力が入ったのか、熟れた後蕾がひくつくのが分かった。  竜紅人の心の中にある衝動が生まれる。    もっともっと啼くところが見てみたい。  身体中に己の証を刻み込みたい。  もっともっと貪って、胎内(なか)に己の肉棒を突っ込んで、掻き回して中に劣情を何度も吐き出して、精で膨らんだ腹を撫でてみたい。  本当は駄目なのだと分かっていた。  香彩の身体のことを考えると、気を失った時点で、ゆっくりと休ませた方がいいのだと、分かっていた。  だが香彩の足を抱えた時から、なるべく見ないようにしていた後蕾を見てしまって、竜紅人の背をぞくりとしたものが走る。  ふっくりと腫れてしまった後蕾の窄まりから、とろとろと溢れ出るのは、先程己が放った劣情の証だった。 (……ああ……) (だめだ……) (……このままお前の胎内(なか)を掻き回して、もうオレ以外、満足できないくらい、骨の随までもっと……もっと、俺の色と匂いに染めてやりたい)  はぁ……と、覚えた熱を発散させるかのように、息を吐き出しながら、竜紅人はおもむろにその伽羅色の髪を掻き上げる。  組み敷いたまま、香彩の身体を舐めるように見つめた。  あますことなく曝け出した白い身体は、己の手管によって薄桃色に染め上げられていた。もう触れていないところなどないのだとばかりに、散らされた鬱血痕。お互いの体液が混じり合った飛沫。  そんな扇情的な姿に、竜紅人は激しい欲望が鎌首をもたげるのが分かった。  あれだけ求めたというのに、香彩が欲しくて欲しくて堪らない。  己の渇望の深さに眩暈がした。  これ以上は駄目だ。 (……これ以上、貪ったら俺はお前を……) 壊してしまう。 「……りゅ、う……」  声が聞こえた気がして、竜紅人は香彩の顔を見る。 「……りゅ……こ……と……」   まだ夢の中にいるような、惚けた口調だった。  顔に向かって伸ばされる手を、しっかりと掴んで香彩に触れさせる。たったそれだけで、幸せそうに微笑む香彩の笑顔に、竜紅人は息を詰めた。  とろりとした深翠の瞳が、竜紅人を見ていた。  その瞳に、捕らえられる。 「……りゅう……好き……」  愛しさで息が止まりそうだった。  自分が育てた愛し子。  育てたが上に、決して受け入れられることはないのだと思っていたこの想いを、香彩は己の醜い執着と嫉妬ごと受け入れてくれた。    ──好きだよ、竜紅人。ずっとずっと……好きだった。  香彩の言葉を思い出して、想いが溢れて堪らなかった。 (……ああ、好きだ)  好きだ。  好きで好きで、堪らない。 「……俺も……好きだ」  その吐息すら、空気に触れて混ざってしまうのを、許したくないくらいに。  竜紅人は香彩にそっと触れるだけの口付けを、ふっくりと腫れた唇に落とす。 「……りゅう……?」  「ん? どした?」  幾度かの口付けの合間に、香彩が竜紅人の名前を呼ぶ。  至近距離で見る香彩の深翠色の瞳は、何かを言いたげに揺れていた。  ふと。 「──……っっ!」  下から腰を突き上げるような動作をして、香彩が自らの陽物を、竜紅人のそれに擦り付ける。  それだけで竜紅人の雄は、簡単に硬さを取り戻してしまう。 「……やっぱり……我慢してる」 「──っ、かさい……! だめだ……!」 「……がまん、しないで……りゅう……」  その声に眩暈を覚える。  香彩の身体の負担を考えたら、ここで止めるべきなのは分かっていた。  だがすでに竜紅人の雄に擦り上げていたせいか、反り返るまでに硬くなってしまった香彩の陽物が、誘うように再び己の雄に擦り付けられる。 「──……っっ!」   堪らず息を詰めれば、ん……と、香彩の甘い声が耳を刺激する。  胎内(なか)挿入(いれ)なければ、負担は少ないだろうか。  香彩を眠らせた方が良いと思う心とは裏腹に、きっとこのまま大人しく寝てくれそうもないと、竜紅人は言い訳じみたものを心内で思い、自身を納得させた。  散々擦り上げてくれた仕返しとばかりに竜紅人は、香彩の陽物の裏筋を、おのれの肉棒で下から上へ、下から上へと滑らせる。 「……あ……っ、ん」  すると熱い吐息と善がり声と共に、香彩は頭を振った。  その嫌だとも堪らないのだとも言った動作に、竜紅人の剛直は更に硬さを増す。    香彩が手を伸ばして、竜紅人の男根に触れた。  白い指が赤黒く猛ったものに絡みつく。  突然の刺激とその様のあまりの淫靡さに、欲望はさらに成長する。  お互いの猛りを濡れた音を立てて合わせて、香彩の指ごとまとめて扱くと、恐ろしいほどの快感が背筋を駆け上がった。  耳元に掛かる、香彩の熱い吐息と淫声(みだらごえ)。 「……りゅう……んっ、りゅう……っ」  譫言(うわごと)のように呼ばれ、耳に吹き込まれる度に、身体の熱が上がっていくのが分かって、竜紅人は無意識の内に突き上げるような腰の動きをした。  耳元で感じる熱い吐息の中に、くすりとした声が混じる。 「……りゅう……ぼくは……だいじょうぶ……だから……」  だから……挿入(いれ)て……。  ほとんど吐息のような声で囁かれ、耳朶の柔らかいところを甘噛みされれば、竜紅人のなけなしの理性は、崩壊したのも同然だった。  竜紅人が上体を起こす。  開かれた白い足を更に強引に開いて、その剛直を、熟れた後蕾に擦り付ける。  薄桃色の秘肉が赤黒い己を、ゆっくりと呑み込んでいく様子は、何度見ても淫靡だった。  ふと香彩の手が伸ばされる。  まるで挿入(はい)っていくのを確かめるかのように、赤黒の陰茎に白い指が絡まる。  その光景は姦濫であり卑猥であり、また竜紅人を求める素直さも相俟って、まさに絶景だった。  真白く無垢だった身体が自分に犯されていく姿は、ひどく加虐的な欲望を刺激する。 「……そそるなぁ……かさい……!」  そう言いながら竜紅人は、己の雄を一気に根元まで突き入れた。 「──っ……あぁぁぁっ!」  竜紅人は激しく抽送を開始する。  奥を穿ち続けると、香彩は生理的な涙を、その深翠の瞳から幾筋も溢す。それを丁寧に舐め取りながら、竜紅人は僅かに律動を緩めた。  突き入れる時は柔軟に受け入れ、引き出そうとするときゅうと締め付けてくる。まるで離すなと言わんばかりの胎内(なか)だったが、竜紅人はこの短い時間で分かっていた。  香彩の陽物を弄ってやると、更にも増して、ぎゅうと締め付けてくることを。  すでに硬く、自身の腹に先走りの蜜を溢す香彩の陽物を、やんわりと掌で包むと、その熱さが手を通して伝わるようだった。 「……っん!」  香彩が息を詰め、びくんと身体を揺らす。  竜紅人が香彩の陽物を扱きながら、ゆっくりと抽送すれば、奥へ奥へと招き入れるような胎内(なか)のうねりに、今度は竜紅人が息を詰める番だった。 「……りゅ……う、や、まって……りゅ……」  扱く手を止めるかのように、竜紅人の手に、香彩の白い指が絡まる。 「……いっ……ちゃうから……やだ……っ、いっしょに……っ」  いっしょに、いかせて……! 「──……っ!」  とろんと嫣然とした表情を浮かべる香彩に、竜紅人の中に僅かに残っていた理性が決壊する。 「……ひ、ぁ……!」  胎内で大きくなった熱を感じたのか、竜紅人を煽った香彩が悲鳴に近い声を上げた。  その律動はすぐに激しくなる。  最奥を穿ち、揺さぶるのと同時に香彩の陽物を少し荒々しい手付きで扱けば、香彩は竜紅人の手の中に、白濁とした凝りを吐き出した。  絞り取るように蠕動する胎内(なか)に包まれて、欲のままに竜紅人が香彩の胎内(なか)で果てる。  だが竜紅人の剛直は、硬さを保ったまま、衰える様子はなかった。  これ以上は本当に駄目だ。  そう思って抜こうとすると、香彩の両足が竜紅人の腰に絡んで、引き留める。 「……かさい……っ!」  やだ、と達した余韻に蕩けた表情を見せながら、香彩が言う。 「……ぜんぶ……ちょうだい……!」  なかに、ぜんぶ……!  きゅうと締め付けるのは、決して無意識ではないはずだ。 「……これだけ煽ったんだ。覚悟しろよ……かさい……!」  香彩の耳元にそう吹き込む。  初めての交わりで、抱き潰してしまうかもしれないと、竜紅人は覚悟を決めながらも、香彩の腰を掴み直したのだ。       ***    香彩があまりにも幸せそうに笑みを浮かべて、再び意識を失っていくのを見て、しまったと思った時には、もう手遅れだった。  何度か突いて胎内(なか)に熱を放つ。  人形(ひとがた)のまま、いつ出したのか覚えのない竜の尾が、香彩の陽物を責めていた。  ──ゃぁああぁぁぁ……もう……ゆるし……っ、んんぁぁぁぁ!!    耳に残る香彩の艶やかな淫声(みだらごえ)。  もっと啼かせてみたくなって、後蕾を穿ちながら、竜の尾の先端が鈴口を責め、舌と牙と指を使って、胸の頂きを苛んだ記憶が甦ってくる。  いやいやと(かぶり)を振り、止めれば強すぎる快楽からか、涙を流しながらも、もっとと強請(ねだ)る香彩の淫らな様を思い出す。  鈴口を責めていた尾の先端を抜けば、既に透明になっていた精が、とろとろと溢れた。  腫れてしまっているそこを、腰を引きながらも一舐めして治す。  ああ、甘い。  ずっと貪り、啜っていたくなるような、甘さだ。  抜けそうになりながらも、未だ胎内(なか)挿入(はい)ったままの雄が再び熱を持ちそうになって、竜紅人を大きく息を付きながら、ゆっくりと己を抜いた。  後蕾から溢れてくる白濁とした凝りが、敷栲(しきたえ)に染みを作る。  それを見て治まりかけた熱が、再び激しく疼き出す。  本当にだめだ、これ以上は。  竜紅人は香彩に触れるだけの口付けを落とすと、香彩の側を離れる。  湯殿に香彩の身体を清める湯を取りに行こうと思った。  ついでに冷水でも浴びてこよう。  そうすればこの熱も、少しは冷めるかもしれない。  新しい敷栲(しきたえ)と上掛けも必要だ。  くしゃくしゃに皺が付いた上掛けを、香彩の身体を冷やさないようにと被せる。  情事の痕の残る、その身体を隠したかった。  ここには自分達しかいないが、それでも己の所有印を散らした身体を、己のいない時に晒したくなかった。  (……一体どれほど自分は)  香彩のことが好きなのだろう。  心を交わし、肌を交わしたら、今まで以上に独占欲が湧いてくる。  誰よりも大切にしたいのに、壊してしまいたくなる。  もっともっと啼かして、もっともっと自分だけを見てろと、『竜の(こえ)』で命じてしまいそうで。 「……重症、だな」  そう呟き竜紅人は香彩に、触れるだけの接吻を贈ると、部屋をあとにしたのだ。  【番外編 貪る 完】  『蒼竜は泡沫夢幻の縛魔師を寵愛する』へ続く     

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