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庭師テツの番外編 鎮守の森 6

 そのまま記憶が、飛んでしまった。  次に目を覚ますと、おれは自分の部屋ではない場所にいた。 「ここは……どこだ?」  同じように和室の布団に寝てはいるが、いつものように部屋に充満しているテツさんの匂いがしなかった。  いや違う! 部屋に漂っていないだけで、もっと強烈なテツさんの匂いを近くに感じる。 「えっ!!」  生身の人肌が間近に……驚いて飛び起きてしまった。 「なっ!」  あろうことか……!  おれはテツさんの布団の中で、彼に包まれるように眠っていた。   「あぁ……桂人、起きたのか」 「なっなんでおれ……ここに? どうしてテツさんと同じ布団にいるんですか! お、おれに何を?」  キッと睨みつけてしまった。  着ていた浴衣の袷をきつく握りしめて…… 「ははっお前、昨日俺にしがみついて離れなかったぞ。だから仕方なく、ここに連れて来た」 「馬鹿な……このおれが、そんな事……するはずない!」  テツさんは呑気な様子で大欠伸をしながら、髪を掻きむしった。 「なんだ、何も覚えていないのか」 「覚えていません! 何も!」 「つまんないな。ちょっとは可愛いと思えたのに」 「……可愛いですって? 変なこと言わないで下さい」    慌てて飛び起きると、つま先がズキっと傷んで、畳につんのめってしまった。 「痛っ……!」 「大丈夫か。指、思ったより深く切れていたな。あとで医者に行って診てもらおう」 「こんなの、かすり傷だっ」  やっと思い出した。  昨夜もテツさんの匂いのせいで夜中に目覚めてしまい、水を飲もうと炊事場に行ったんだ。そこでテツさんと出くわして。  あ……まずい。  その後に起きた事を思い出し、急に気持ち悪くなってしまった。  記憶ですら、このざまだ。本当におれはアレに弱い。 「うっ──うぐっ」 「あ! おい、ここで吐くな」  テツさんが慌てて洗面器を差し出し、俺の手をグイっと握って持たせてくれた。 「離せっ!」 「ここに吐いていいぞ」    こんな醜態……見せたくない。なのに足が痛んで……しゃがみ込んでしまい、結局その場で嘔吐してしまった。  不覚だ。 「う、うう……」 「そうだ、遠慮すんな。全部吐いてスッキリしちまえ」  大きくてあたたかな手で、背中をゆっくり擦ってもらう。  なんだよ。この人……  まるでおれが樹の幹となり、彼に丹念に世話にされているようじゃないか!  こんなの変だ……  こんな優しい手は知らない。  やめてくれ! 「よし、これは俺が処理してくるから、ここで少し待ってろ。足の消毒もしよう」  テツさんが洗面器を持って出ていく姿を、黙って見つめるしかなかった。  こんな弱味……見せてどうする?    おれは馬鹿だ。  未だに血の色が怖いなんて。  こんなことじゃ成し遂げられない。  テツさんが出て行った部屋で膝を抱えて蹲っていると、窓をノックされた。  背の高い人影が、くもりガラスに映った。  一体、誰だ? こんな朝から…… 「おいっ、テツ、開けろよ」  テツさんの知り合い?  どうしたらいい? この状況! 昨日の相談の続き(不要な方はスルーで) **** 昨日はいろいろと相談に乗っていただき、ありがとうございます。 ペコメでも温かいコメントを下さり嬉しかったです。 皆様……お優しくて励みになりました。 まだTwitterアンケート結果が出そろっていないので(1・2が接戦なので)方針を決めかねています。とりあえず今日はこの流れに沿って進めてみますね。 Twitterアンケートはこちらです @seahope10 https://twitter.com/seahope10/status/1297002255296499714?s=20 いつもあとがきで五月蠅くしてしまって、すみません。

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