291 / 505
庭師テツの番外編 鎮守の森 47
テツさんに抱かれる。
テツさんに貫かれる。
テツさんと一つになる。
愛しい人と一つになる行為は、おれにとって信じられない程嬉しく、神聖なものだった。
一方的に奪われ、嬲られ、弄られた躰に、愛しく触れてくれる人がいた。
テツさんは、おれの希望の光だ。
おれが暗闇から見つけた光は、テツさんだ。
丁寧に解された窄まりは、テツさんを迎え入れる時を、今か今かと待っていた。
静寂の空間で……
ベッドの軋む音。
テツさんの荒い息遣い。
おれの心臓の音。
それがこの世界に聴こえる全ての音だった。
胸元に落とされる口づけ、ローブの裾を割られ、濃くない茂みで揺れるおれのモノの先端は溢れんばかりの蜜を孕み、テツさんに吸い上げられていく。
テツさんに唇で食むように刺激されて、堪らなく……首を左右に振って藻掻いた。
何だ、これは……?
この行為がこんなに気持ちいいなんて……知らなかった。
嫌悪感と痛みしか感じないものだと、ずっと想像し怯えていたのに。
再び挿入された2本の指が躰の中をずっと蠢き、何かを探し、何かを見つけられ、躰が跳ねてしまう。
「……ぁ、……あぁっ」
全身を慈しまれている。まるで……おれを尊いもののように。
「もういいから、もうっ──早く」
「駄目だ。大切にしたい」
「んっ、んっ」
テツさんの指が生み出す快楽に溺れていく。
「そろそろだな」
「ん……」
たっぷり濡らされた部分にテツさんの視線を感じ、いたたまれなくなる。
「そんなに、見るな」
「綺麗だよ。桂人はどこもかしこも……『森の精霊』のような人だ。やっぱり海里さんが言った通りだな」
「何を言って……?……ぁっ、や……んん……っ」
「気持ちよさそうだな」
「い、言うな」
指は抜き取られ、代わりテツさん自身がやってきた。
「……あ、あぁっ、」
強烈な異物感。だが、ずっと待っていたもの。
おれの躰がテツさんを呑み込んで、受け止めていく。
「桂人……っ」
「テツさんっ……あ…あ、んっ」
信じられない程の甘ったるい声で、テツさんにしがみついていた。
ゆったりと腰を動かされて、中をかき混ぜられて、むせび泣いた。
「いいか」
「……い……いいっ、すごく」
おれの腰も、テツさんの動きに連動し上下していく。ベッドの軋む音が一段と大きくなり、腰がぶつかる音も卑猥に響く。
「もっと、もっと深くに入ってもいいか」
「ん……う、んっ」
両足をテツさんに大きく抱え込まれ、一層奥に彼を受け入れる姿勢を取らされた。
「これ、やっ……恥ずかしいっ! 」
甘い抵抗だった。
見破られているだろう、もっと欲しいと躰が疼いているのを。
ぴたりと結合したまま、ふたりで大海原に出たかのようにゆらゆらと揺れた。
「ひっ……あぁっ──」
何度も何度も擦られ……もう限界だった。
テツさんの背に手を回し、ギュッとしがみついた。
彼の躰は、まるで『鎮守の森』の太い幹のようだ。
「桂人、好きだ」
「おれも……テツさんが好きだ」
「愛してる」
「おれも、愛してる」
言葉も躰も重ねた。ぴったりと──
「うっ……あぁっ──」
「くっ」
躰の奥深い場所に、テツさんから放たれた熱を感じた。
おれは純潔をテツさんに捧げた。テツさんも同じだった。
この後……どうなっていく?
おれたちは壊れて行くのか……それとも。
体内に解き放たれたテツさんという熱が、俺の躰の隅々にまで沁み込んでいく。
躰が生まれ変わったように、内部から作り替えられていくのを感じた。
「うっ……」
テツさんに貫かれたまま、喉を反らして仰ぎ見たのは、白薔薇の洋館のアーチ型の窓。
窓の外は……まだ白昼だった。
「あ……っ」
やがて……太陽とは別の眩い光が、天上から静かに降り注いできた。
窓から部屋に滑り込んで来る。
おれたちは産まれた瞬間と同じ姿で抱き合ったまま……その柔らかな白光に包まれていった。
ともだちにシェアしよう!