319 / 505

その後の日々 『冬郷家を守る人』 7

「おはよう! 瑠衣」 「ん……もう朝なの? 」 「そうだよ。君が寝坊だなんて、珍しいね」 「……誰のせいだと……う、ケホッ」 「あぁ声が枯れているな。空気を入れ替えよう。この部屋は濃厚過ぎる」  瑠衣と共に再び訪れた日本。  今回の旅は、瑠衣の生母の霊を沈めるという非現実的だが、重大な目的があり、全てが解決するまで気が抜けなかった。  だから君に手を出すのは控えていたが、解決したと同時に我慢できなくなり、昨夜はここで君を抱き潰してしまったわけさ。    カーテンを開いて両開きの窓を全開し、新鮮な朝の空気を呼び寄せた。  秋の冷気が部屋を入り込み、君は剥き出しの肩を震わせた。 「ん……寒いよ、僕の服はどこ……? 」  生まれながらの色白な素肌を、自分の腕で抱き寄せて震えている。  そんな仕草が、また俺を煽るのを知っている? 「アーサー、服を……」 「いやだね」 「何を言って? 」 「君が煽るからいけないんだ」 「え? 僕は何も……」  全裸の君をベッドにもう一度押し倒し、手首を耳の横でシーツに固定して唇をすっぽりと塞いだ。 「んん、──駄目だよ。もう、朝」 「朝だからいいんだよ。よく見える。ここも、ここも……全部」  君の尖った胸の粒や薄い茂みを指先で辿り、昨日俺がつけまくった赤い花びらをぺろりと舐めてやると、瑠衣の頬は、みるみるうちに上気していく。 「瑠衣……瑠衣って綺麗な名前だ。日本語の……漢字の意味を知ってからますます気に入ったよ。瑠衣の『瑠』は、瑠璃という紫がかった紺色の玉・七宝の一つから、『衣』は包み込むもの。とても君らしい……優しい名前だな」  だから俺は以前のように『ルイ』ではなく『瑠衣』と心を込めて呼ぶ。  名前は……君の亡くなった母親が、君に唯一残してくれたギフトだから。 「アーサーに瑠衣と呼ばれるのは……好きだよ」 「俺も瑠衣と呼ぶのが好きだ。瑠衣……もう一度繋がろう」 「ん……いいよ」 「ありがとう」 「……本当はこの屋敷で抱かれるのは抵抗があるのに……今日は特別だよ」  瑠衣も肩の荷が下りたようでリラックスしている。だから、いつになく柔らかく微笑んでくれた。  君の母親……無事に成仏出来て良かったな。  まさか海里の実家を巻き込んでの騒動になるとは思わなかったし、おばあさまが昔、庭師の少年から託されたという『乳香』が必要になるとは……君があの日、命懸けで取りに行った意味が、今になり分かった。 「優しくて、可愛い瑠衣……いつまで経っても……俺の気持は十代の頃と少しも変わらないよ」 「恥ずかしいことばかり言ってくれるんだな……あ、お願い……窓を閉めて。声が漏れてしまいそうだ」 「大丈夫……まだ早朝だ。海里と柊一は、今日はきっと寝坊するだろう。柊一に至っては、起きられないかもな」 「またそんなことを……もうっ」  くすくすと笑う瑠衣の笑顔は、いつまで経っても儚げなままだが、そこがまたいい。  俺とふたりでいる時は、全部、俺に守らせて──     あとがき(不要な方はスルー) **** 本日のお話は、アーサーと瑠衣が主役の『ランドマーク』の『君と僕の隠れ家』 と連動しております。

ともだちにシェアしよう!