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その後の日々 『冬郷家を守る人』 12
煽ったつもりではなかったのに、散々、奥を突かれた。
「ん……っ、……あっ、やだ……」
おれの躰が、テツさんの熱で浸食されていく。甘い痺れに震えて身を捩るが、俺よりも大柄なテツさんに動きを封じられ、更に快楽を足される羽目になった。
ぐずぐすになった奥を、テツさんの塊が何度も何度も穿って行く。
「ひっ……っつ……うっ」
激しく突き上げられて……呼吸が乱れ、しゃくりあげるような心許ない声しか出なくなっていた。
「気持ちいいか」
「ぁ……っ、あっ」
おれの先端からは、ひっきりなしに透明な雫が生まれて、幹を伝い降りて行く。テツさんが腰をぐるりと回して中を大きく掻き混ぜると、一段と濡れた卑猥な音が、ぐちゅぐちゅと部屋に広がった。
胸の尖りを啜られ内壁を擦られ、躰中の性感帯が過敏に反応を続けていた。
テツさんの……すごい……すごい熱量だ。
「もう、やだ……あ……っ、」
口では嫌、いや……さっきからと口走ってはいるが、本気で嫌なんじゃない……むしろ嬉しかった。
おれなんかを本気で求め愛してくれるテツさんの存在を、我が身を持って感じることができるのが幸せすぎて……クラクラしていた。
なんだろうな。羞恥と快楽に塗れながらも嬉しさを感じ、いまだ辿り着いたことのない場所に、おれはいる。しかもひとりじゃなくて、テツさんといる。それがいい。最高にいい。だから俺も必死に身をくねらせて、テツさんに抱か続けた。
「いいぜ……桂人。最高だ……お前。熱くて可愛いな」
「か、可愛いは余計だ! あ……もうっ」
「こうか」
テツさんの大きな動きに、またもっていかれる。さっきから期待しているものが近くまでやってきた。テツさんに傷だらけの躰を宝物のように愛撫されながら、極みに到達していく。
「はぁ、ううっ……最高だ! テツさん」
「あぁ桂人……」
余韻に浸る暇もなく、今度は正面からだ。足首を掴まれ、テツさんの肩に大きく担ぎ上げられた。
「えっ、もう──? 」
「そうだ」
「ま、待って、まだ……」
達したばかりの躰がどんなに過敏なのか、知っている癖に。
「今日は抱き潰して欲しいんだろう? 」
「それは、だめ……駄目だ、テツさん。おれ、流石に仕事ができなくなるっ」
テツさんから逃れようと彼の胸に伸ばした手は、頭の横にギュッと押さえつけられた。そのまま再びテツさんが腰をぐぐっと進めてきたので、俺も躰の力を緩めて受け入れた。
「あ……んんっ」
「桂人、いいか」
「ん……っ、いい。すごくいい」
生きていると感じる。
なんとなく生きて来たのではなく、今を生きている。
貪欲なまでに……テツさんを求め、欲している。
すっかりテツさんに馴染んだ場所で、躰の芯ごと揺さぶられる。
「まだ、求めているのか。桂人」
「うっ……テツさん……好きだ。もっと……欲しい」
最後は彼の背に両手を回して、自ら躰をぴたりと合わせて揺れていた。
終わらない……朝が来ても。
それが、嬉しいんだ。
****
「瑠衣、どこへ行く? まさか皆を起こしに行くつもりか」
「だって、もうこんな時間だ」
「まぁ……それは、そうだが」
「寝坊し過ぎだ。これではせっかくの朝食が昼ご飯になってしまうよ」
朝から瑠衣をベッドに押し倒して再び抱いた。なのに彼は……時計のベルが鳴った途端、スッと執事の顔になってしまった。おとぎ話の中じゃあるまいし……あぁ余韻を楽しみたかったのに。
「なぁ、瑠衣はもう、執事はやめたんじゃ……」
「それは英国での話だよ」
「うっ」
「ここでは執事の仕事をしてもいいと……君が前に言ってくれたよね? あれは嘘だったの? 」
「ううっ、俺の天使は手厳しいな」
「その言い方よしてくれよ。僕は天使なんかじゃない」
「いや、いつもいつだって俺の天使だよ」
こういう時、口では冷たい瑠衣だが、頬は上気しているんだよな。
本当に、何歳になっても瑠衣は最高に可愛い……
「ア、アーサー?」
「まだ誰も起きて来ないから、いいよな」
君をパントリーの中に押し込めると、かつて俺の衣裳部屋で、こんな風に君を追い詰めて、口づけをしたことを思い出す。
瑠衣は耳朶を染め、頬を染め、あの頃と変わらない表情で俺を見上げてくれた。
「も、もう……君って人は……いくつになったと」
「変わらぬ朝の挨拶さ」
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