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その後の日々 『冬郷家を守る人』 11
一段飛ばしで階段を駆け上がる、リズミカルな足音が心地良い。
木も花も、手を掛ければスクスク育ち、綺麗に花を咲かせ、楽しませてくれたが、決してこんな風に俺に近寄ってはくれなかった。
だが……桂人は違う。俺を求め、受け入れてくれる存在だ。
「テツさん! 」
扉を遠慮なく開き、俺に勢いよく抱きついた桂人に唇を重ねられた。
遠慮なく俺の唇を奪う君も可愛いが、やられっ放しは性に合わない。応戦するような口づけを重ね、そのまま桂人をベッドに押し倒した。
「ん……っ」
作務衣の袷から手を差し込み、小さな尖りを爪で引っ掻けば、桂人ははっとした表情で震えた。
「どうした? 過敏だな」
「う、うるさいな。どうでもいいだろう! 」
決まり悪そうにプイっと顔を背けてしまったが、枕に埋もれる頬は赤く染まっていた。
「くくっ、覗き見して、あてられたみたいだな。可愛い天使たちに」
「何でそれっ……ぐ、偶然、見えただけさ」
「お前も同じだよ。俺の部屋で羽を休ませる天使だ」
「なんだよ。それっ」
「ただ俺の天使は風来坊だから、すぐにどこかへ行ってしまう。だから腕の中にいる時はたっぷり触れておかないとな」
「あ、あっ……」
彼の作務衣を肩から脱がし、象牙色の肌を露わにしてやる。
朝日に埋もれる君は、とても綺麗だ。
「眩しい……」
「これが朝日だ。お前は今日からは自由に生きていくんだ」
「ん……」
「朝は日の光を浴びて目覚め、窓を開き新鮮な空気を吸い込む。それから温かい朝食を取り、日中は懸命に働いて、腹が空けば昼食にする。そしてまた働いて、シャワーを浴びて汗を流し、夕食を取ろう」
「ん……っ」
桂人の胸元を熱心に啄みながら、話を続けた。胸への刺激で震える桂人を腕の中に封じ込めると、彼は安堵したように目を閉じ、躰を脱力させた。
「それから、夕食の後は何をするんだ? 」
「そうだな。いつものように本を読んでやる。勉強も教えてやろう。それから夜が更けたら、こうやってまた共寝しよう」
「随分と盛り沢山だな」
「そうだ。桂人の人生はこれからだ。まだまだ取り戻せる」
桂人は嬉しそうに俺の首の後ろに手を回し、抱きついてきた。
「全部、テツさんも一緒なんだろう? 」
「そうだ。いつも近くにいる」
「よかった。おれ、頑張ってみるよ……今更だが、漢字も覚えたいし、冬郷家にお世話になるんなら、瑠衣さんから『執事』という仕事についても学ぶよ」
「無理すんなよ。いきなりは駄目だ。お前は野生児のようなものだから。でもそこがお前の魅力だ」
桂人の今までの暗黒の人生、それを含めて魅力的だから、大丈夫だ。
「ありがとう。テツさん……こんなおれを好いてくれて」
「可愛いな。俺の腕の中に収まる桂人が可愛い」
「可愛くはない……」
作務衣の下衣を脱がし、下着も剥ぎ取って……生まれたままの姿にし、そのまま桂人の硬質な躰をくるりと裏返して、背中を露わにした。
「……綺麗だ」
傷だらけの桂人。その傷こそ、賢明に生きた証。
天使の羽が刻まれた背中に口づけ、そのまま丸みを帯びた丘を辿り、狭間に分け入っていく。奥深くの繋がる部分の入り口を、舌で解していく。
「あ……そんな所っ、や……っ、舐めるな」
「慣らさないと、まだ無理だろう」
「や……っ」
明るい場所で躰を開くのは彼の羞恥心を大いに煽ったようで、腰を高くあげさると、いやいやと大きく頭を振った。
動きを制するように細腰を両手でしっかり掴んで、耳元で低く甘く囁く。
「じっとしていろ。愛したいんだ」
「……分かった……愛されたいよ。おれも皆と同じように……抱き潰されたい」
おっと……昨日しなかった分、酷くしそうだ。
そんな煽り文句を浴びたのでは。
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