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永遠の誓い 10
「海里さん、お待たせしました」
「良い物を買えた?」
「はい、あの……海里さんの分も買いました」
「えっ!」
海里さんがあからさまに驚いたので、僕の方がびっくりしてしまった。
「あ、あの? ただの懐紙ですよ。期待しないで下さい」
「参ったな。君からのサプライズ……嬉しいよ」
「そんな」
美貌も才能も財産も……何もかもお持ちの海里さんが、僕が選んだ懐紙ひとつに喜んで下さる。それが嬉しくて、じんわりと胸が温かくなる。
「青海波の模様があったんです」
「どんな模様?」
「あ、これです」
近くにあった手拭いを指さして、教えた。
「あぁ、見たことがある」
「無限に広がる波文様に、未来永劫続く幸せへの願いと平穏な暮らしへの願いが込められています」
そう告げると、海里さんが薔薇の花のように、ふんわりと微笑まれた。
「柊一の夢は叶うよ。俺が叶えてあげる。そのことを結婚式で誓おうと思っているよ。さぁ次は俺の用事、結婚式の俺たちの衣装選びだ」
「えぇ?」
海里さんに背中を押されて、紳士服売り場につれてこられた。事前に事情を話して下さっていたようで、個室の打ち合わせコーナーに通された。
「白い燕尾服を特別にあつらえてくれ。俺と彼の分を」
「畏まりました」
燕尾服といえばブラックが基本で、白はシャツとタイのみなのに使われるのに。
「か、海里さん?」
「常識にとらわれなくていいんだよ。冬郷家の秘密の花園では……ね。あの庭には白が似合う、白薔薇の庭園だから、俺たちも白で揃えないか」
「は、はい……」
細かく採寸されて照れ臭くなった。
僕は男だから……おとぎ話の世界のように純白のウエディングドレスを着るわけではない。もちろん着たい訳ではない。だが白にはずっと憧れていた。
白色には「清楚」「純潔」「純粋」という意味があり、またウェディングに白色が多いのは、穢れや悪を払うという意味も込められているそうだ。
白は何にも染められていない色だ。
『僕は海里さんの色に染まりたいのです』
色で想いを伝えるなんてロマンチックだと、実は密かな憧れを抱いていた。
こんなこと恥ずかしくて言えなかったのに、海里さんはすごい。
いつだって僕の夢を察知して、叶えて下さる。
「あの……僕はこんなに幸せでいいのでしょうか。身に余る幸せです」
「そんなことない。柊一にはもっともっと幸せになってもらいたい」
二人であつらえた白い燕尾服。
海里さんが根回しして下さっていたので、店員さんに奇異な目で見られない。
守られている。
海里さんという大きな傘に。
それを実感して、心が震えた。
彼から降り注ぐ大きな愛は、海のように広い。
海里さんからの愛が、何度も何度も打ち寄せる波のように……僕の身体に届く。
「幸せです」
「そのひと言で、今日ここに君をつれてきた甲斐があったよ。さてと、いつかのようにお寿司を食べて帰ろう。君の父上が行きつけだった店を予約してある」
「あ……ですが、雪也が帰ってきてしまうのに」
「今日は雪也くんも、きっと同級生と寄り道をしてくるよ。後のことは桂人に頼んであるから大丈夫。さぁ君は……もっと自分のための時間をつかうべきだよ。おいで」
僕の王子様が、真っ直ぐにエスコートしてくれる。
僕を幸せな道へと――
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