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第1話
「……っう、ん、ン……!」
知らず発した声の淫靡な甘さに、佐々木(ささき)圭(けい)は身悶えた。
明かりを落とした仄暗い部屋のベッドの上、うつ伏せで膝をつき、腰を高く上げた格好で、圭は必死に声をこらえる。
けれどチュクチュクと濡れた音に耳を犯されるだけでも、圭の体は劣情を煽られてしまう。それは無防備に曝け出された後孔を舐められて立つ水音だ。圭よりもいくらかぬるく、肉厚な舌で――――。
「……もうほころんできたぞ、ケイ。こうされるのにも、慣れてきたみたいだな」
「言、うな、そんなことっ」
「どうして。何も恥ずかしがることはないだろう?」
ふふ、と背後から低い笑みが届いて、「彼」が体の位置を変える気配がする。
そちらは恥ずかしくなくても、こちらは死ぬほど恥ずかしい。
でも圭は、否応なくこれをしなければならない。嵐のような発情の荒波が過ぎ去るまでは、せいぜいみっともなく声を立てぬよう、シーツに顔を伏せているしかないのだ。
どうか今夜も無事終わって、この欲情が収まってほしい。
そう思った次の瞬間。
圭はうつ伏せの体をくるりと返され、肢を大きく開かされた。
「ちょっ、なんでっ……」
「こちら向きで繋がるのも試したほうがいい。ベッドに背中を預けるほうが、人間には楽だろう?」
「で、でも」
「腹のこれも反応している。ほら、淡く光り出したぞ?」
「っ……!」
下腹に視線を向けて、圭はビクリと震えた。
引き締まった腹筋の上で、妖しく明滅を始めた赤い紋様。
毎晩月の出ごとにジンジンと疼いて圭を乱し、淫らな欲望で悶絶させる紋様――淫紋の輝きは、圭の腹の奥に一つの命が宿っている証だ。目にしただけで体が燃えるように熱くなって、気の昂ぶりで息ができなくなりそうだ。
「あ、あ、待っ、はあぁ……!」
肢を開いたまま腰を持ち上げられ、また後ろを舐られて、下肢がビクビクと震える。
肢の間で頭をもたげる圭の欲望は、すでに先端から嬉し涙を流している。「彼」に触れられ、雄を繋がれて悦びを与えられることを、圭の体は熱望している。
腹に竜の卵を抱いた圭の、ただ一人の交尾の相手である番の蜜液を、腹の奥にたっぷりと浴びせられることを。
「は、ぅうっ、マ、リウス、マリウス……!」
淫紋が赤く輝くたび浮かび上がる「彼」、マリウスの姿を、おののきながら見つめる。
透明な鱗と褐色の肌とに覆われた巨躯。
圭の尻たぶに添えられているのは、鉤爪の手だ。大きく盛り上がった胸筋と肩には独特の紫がかった黒い模様が浮かび、肩の向こうには折りたたまれた大きな片翼が覗く。
豊かな黒髪と精悍な顔立ちこそ人間のそれに近いが、彼は竜と人間の血を引く種族である、竜人だ。圭は理由を知らないが、どうしてか「邪竜」と呼ぶ者もいる。
そんな異種族の屈強の雄と番になり、彼に抱かれるため後孔を解されていることに、クラクラとめまいを覚える。
ここは異世界、レシディア。
人間である自分は、男であっても脆弱な種族なのだと、まざまざと実感させられる。
「そろそろ、いいかな。挿れるぞ、ケイ」
マリウスが体を起こし、圭の肢を抱え上げて身を寄せる。
息を詰めた瞬間、解かれた窄まりに肉杭がぐぷりと入ってきた。
「くっ、ああっ、ん、んぅっ……」
マリウスのそれは、人間の男が持つものとさほど変わらぬ形をしていた。
だが何しろ巨躯の雄の生殖器官だ。そのボリュームは凄まじく、緩く腰を揺すってゆっくりと挿入されても、圧入感で冷や汗が出る。
この状況で正気を保てている自分が信じられない。
「……ああ、凄いな。おまえの中で竜卵が息づいている。早く俺をよこせと、そう言っているのを感じるよ」
「マリ、ウスっ」
「その求めに、俺は応えよう。何度でも俺を絞り、のみ干すといい。殻を破りこの世界に生れ出る日まで、何度でも……!」
「……ぁ、ああっ、はああっ」
マリウスが中を行き来し始めると、もう何か考えることはできなくなった。
腹に抱いた竜卵が求めるままに、圭は自ら腰を揺すって熱棒に追いすがっていた。
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