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第8 服の下の秘密 1 ※
見ているだけでその滑らかさが伝わってくる、白磁のような白い肌。
だがその肌の滑らかさと柔らかさが最も堪能出来るはずの二つの乳房は存在せず、白い胸板はわずかな膨らみさえも見せてはいなかった。
目を見開いたエクストルの視線が真っ直ぐに下がっていく。
「これは、我が黒族を謀ったのか!」
そこには女性ならば持ち合わせていないモノが存在し、憤怒に顔を歪めたエクストルがレフラを激しく睨み付けた。
「違います!謀ってなどおりません!」
「では、これは何だと言うのだ!」
憤った勢いのままレフラを突き飛ばしたエクストルが、その身体に乗り上げる。
「ひっ、やめっ!!」
成人男性にしてはずいぶん小さいレフラのソレは、エクストルの片手にすっぽり収まってしまっていた。抗う身体を抑えられ、それを強く揉みしだかれて、レフラは痛みに首を振る。
「男の身体でどうやって、子を成すつもりだったのだ」
今まで誰にも触れられた事がない場所なのだ。ここを触れる者が居るとすれば、主となるギガイだけだと信じていて。それ以外の手を感じる日など、来るなんて思いもしなかったのだ。
そんな敏感で秘すべき場所への突然の狼藉に、激しく振った白金の髪が光の中でキラキラと舞った。
「孕めます!ちゃんと子を成す胎は持っています!!」
痛みに身体を強ばらせつつも、必死に張り上げた声にエクストルの動きが止まる。
怒りに我を忘れていたエクストルにレフラの言葉が届いたのだろう。
「胎はある?」
訝しげな表情で見下ろしながら、何かを確認するように、手の中に握ったままのレフラのモノを何度か指でなぞっていった。
「……アンドロギュヌスか?」
だが、本来ならあるべき子種を含む袋がなく、女性として必要な箇所も見当たらない。
「しかし、その身体では両性というよりは無性…しかもだいぶ歪な……」
雌雄が明確に分かれて存在するこの世界で、自分の身体の不完全さを誰よりも知っているレフラは、醜いと言うような嫌悪の視線に晒されながらも、何も言い返す事が出来なかった。
(これは私の愚かさの結果だ……)
本当の無性であった幼少期に、定めをしっかり受け入れていたなら、こんな歪な身体ではなく、しっかりと女性の身体になったのだろう。それなのに、いつまでも意識のないまま抱えてしまった思いや矜持が、こんな身体を作ったはずだ。
あれほど族長である父や、この身体を知る者達が、御饌 としての有り様をレフラに説き続けていたというのに。
(本当に醜い……)
こんな自己本位でしかない内面が剥き出しになった身体など、そう思われても仕方ない。
自分だって醜いと、心の底から思うのだから。
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