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第47 籠の中の鳥 8

幼子でも動物でも躾は始めが肝心になる。 記憶に新しい痛みと怯えを利用した躾は、レフラにとってはどうだったのか。確認するように、腕の中で大人しくなった身体を引き上げる。 「首に手を回して立っていろ」 もう終わりだと思っていたのだろう。その言葉にレフラの顔が絶望感に染まっていく。 何を考えているかが手に取るように分かる様子に、ギガイの中で哀れみが湧いた。だが躾の効果を確認するには、ちょうど良い状況だという事も間違いなかった。 ギガイはそのままレフラの身体を、向かい合うように膝立たせる。その体勢に覚えがあったのだろう。姿勢を維持するように言われたレフラが、縋るように首を振っていた。 「素直で在るのではなかったのか?」 途端に動きの止まった身体から小さな返事が返ってくる。痛みを伴った行為の中で、さんざん心へ刷り込んできた事はだいぶ効果が出たようだ。レフラの身体が素直にギガイの身体へしがみついた。 本当ならただただ慈しみたかった相手だった。そのように扱えない初めての交わりも不本意なものだった。だが、心ではなく身体で縛り付けると決めた今では、その時の交わりがレフラを捕らえる最も有効なものに成っていた。 (皮肉なものだな……) 内心で苦笑を漏らしながら、カタカタと縋りつくレフラを宥めるように、その背を何度も撫でてやる。その感触に心がわずかに解けたのだろう。震えが治まるのに併せて、レフラの身体から花の香がかすかに立ち上がっていた。清涼さと甘い酩酊するような香が混在している不思議な匂い。レフラの持つ清廉な雰囲気とも相まって、男の嗜虐心を煽る危うさを持っている。 「お願いです。また今度にして下さい。今でもまだ痛いんです」 ギガイの首筋へ縋るように顔を埋めたまま、必死に懇願するその声は、もう今までのような意地は残っていない。そんな脆くなったレフラに愛しさを抱きながら。 「何を今度にするのだ?」 分かりきった事さえもあえて口に出させるのは、今が大切な時だからだ。 「…先日のような事です」 「先日とは?ハッキリ言え」 ギガイの掌がレフラの双丘を服の上から包み込み、柔らかな尻臀を掌でゆっくりと左右に割り開いていく。いまだ腫れたままの後孔の縁がそれに合わせて歪に広がっていっているのだろう。あわせて生まれる痛みに耐えるようにレフラの身体が固くなる。 「ゆ、指で後ろを弄くられていた事です!」 「あぁ、お前が他に身体を許そうとして、ここへさんざん教え込んだ時の事か」 「違っ、あぁ、いたぁ……」 歪に広げた孔を布の上からわずかに掠めれば、その刺激だけでレフラの声に水気が含まれた。その怯えを再び慰めるように、首筋に顔を埋めたままのレフラの髪へギガイが唇を落としていく。 「これだけでも痛いのだな」 広げた尻臀を元に戻し、知らなかったとうそぶいた。 「素直で良い御饌であれば、考えよう…お前はどうだ?」 許された事にホッとしたように力を抜き、レフラは何度も頷いていた。サラサラとした髪が肌を滑っていく感触はこそばゆい。その指通りの良い白金の髪を梳いてまとめながら、ギガイがはっきりと口にするよう囁いた。 「しません、他の人へ許したりなんかしません」 何が正しくて、何が間違いなのか。口にさせるのは、しっかりと刷り込ませるのが目的だった。全ては御饌としてギガイの傍に留める為に。そして、これからも一つずつこうやって教え込んでいけば分かるだろう。 (離れたいなどと、思う事が間違いだとな) 「それなら安心しろ。今日は薬を入れるだけだ」 「……薬だけ?」 問い返すのは不安げな声。 「ああ、お前が素直でいる間はな。できるだろ?」 コクッと頷いたレフラが縋りつく腕に力を込めた。

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