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第70 丸薬の一夜 20 ※

「っひぁ…あぁ、くぅっ…」 疼く身体に上がりそうになる悲鳴を堪えて、もう一度レフラが身体を引き上げた。さっきよりも力の入らない脚では、ほんの少し身体を持ち上げただけでも限界だった。震える足ではろくに体勢を保てずに、すぐにズルッと座り込んでしまう。 「っは…ぅっ…あぁ…」 その度に内壁は徒に擦られて、煽られた。だがギガイの呆れをハッキリと向けられ、許しを得られてはいないのだ。終わりを認められていない以上、例え限界を迎えていてもレフラには諦めるという選択肢は与えられていなかった。 だが繰り返すだけで一向に進展しない状況に、ギガイ自身も焦れたのかもしれない。涙を散らしながら何度も繰り返すレフラの腰に添えられたギガイの掌が動きを押し留める。 「動く事ができないなら、動かずに済む仕置きに変えるか?」 ツイッと顎を上向かされ「どうする?」と尋ねながらキスを落とされた。啄むような優しいキスが唇から泣きはらした瞼の上に降っていく。 次に与えられる仕置きはどんな事なのか。どれだけ辛い思いをするのか分からない。それなのにまるで恋人同士の睦言のような、優しい感触にレフラの感情が混乱する。 ただでさえ満足に仕置きをこなせていない状態なのだ。その代替案となる仕置きが今より楽になるとは思えなかった。もしもこなせなかったペナルティ分を上乗せされる辛さだとしたら。そう思うとわななく喉はろくに声を発せずに、答える事ができなくなる。だけど、どれだけ繰り返しても与えられた仕置きをこなす事が出来ないのだ。 もしかしたら、終われない仕置きを前に逃げ道を与えてくれたのかもしれない。与えられる優しさに、そんな甘えた考えを思わず抱きそうになってしまう。 「どうする?お前が好きな方を選ぶと良い。仕置きを変えるか?」 迷うレフラの唇に、もう一度柔らかなキスが落ちてきた。どうせ他に道はない。その優しい感触にレフラが縋るようにコクッと頷いた。 「じゃあ、意識を手放さないように努めてろ。もう今日はそれで良い」 ギガイの指が頬に張り付く髪の毛を払い、涙で濡れた頬を拭う。許しを得られたような言葉にレフラの重荷がわずかに消える。実際はまだ仕置きの最中だとしても、あとはこのまま堪えていれば主の許しは得られるはずだ。ようやく見えた終わりがレフラの心を救った。 素直にコクリと頷いたレフラの腰にギガイの掌が添えられる。わずかに身体を引き上げられ、ズルリとした感触にレフラ喉奥で引き攣った声を上げた。

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