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第110 病中の甘え 11

いくらなんでも失礼すぎるのではないか。 そんな気持ちで伸ばした指先でこわごわとギガイの頭を撫でれば、金が煙る琥珀の目がわずかに細められた。それはまるで猛獣が心地良さげに目を細める姿のようで、恐れに反してレフラの心はふわふわと舞い上がっていく状態だった。 軽く触れるだけだった指先を少し固めの髪に差し込んで、サラサラと髪を梳きながら撫でていく。ギガイの短めな髪はあっけなく指を擦り抜けてしまうのが残念だった。その分レフラは躊躇いながらも何度もその動きを繰り返していく。 (こんな風に触れさせて貰えるのは、きっと私だけですよね…) 隷属としておこがましい考えかもしれない。でも自分以外へ向けられる冷たい声音を思えばそんな期待も湧いてしまう。それにレフラはギガイの御饌として嫁いだ身ではあるのだから、本当にこの主の特別に成れているのだと少しだけでも夢を見ていたかった。 触れる事を許されて、受け入れられた指が嬉しくてたまらない。心地良さそうに細められた眼差しが、孤高として立つ主の甘えのようでこそばゆかった。 「お前の指は気持ち良いな」 フフッとレフラが小さく微笑めば、梳いていた手をギガイへ取られて、指先へちゅっと口付けられる。その感触に、いつの間にか夢中に成っていたレフラが我に返って頬を紅く染めた。 「また同じように労ってくれ」 そのまま引きつけられて、触れ合う程度にキスをされる。近距離で見つめられたままコクリと頷けば、フワッと微笑んだギガイが再びキスをした。深まる様子が一切ない啄むだけの軽いキスは心地良くて、唇が離れた瞬間に2人の間に空気が綻んだ。 「そろそろ食事にするか?」 「ひゃっ!!」 身体をクルリと返されて、ギガイの身体に抱え直される。そのままうなじに口付けられてペロッと肌を舐められれば、レフラの口からは甲高い声が一瞬上がった。 「汗をかいて熱も下がった様子だな。食後に身体を拭いてやろう」 「ギガイ様、今日は降ろして!お願いですから、離して下さい!!」 ギガイの言葉に始めの時のように抵抗を始めたレフラは、ギガイの膝から降りようと慌て出す。だが呆気なく腰に回された腕にその動きは引き止められて、逆に強く抱え込まれる。 「汗をかいて汚いんです!お願いです!離して下さい!」 「今さら汗ぐらいで何を慌てる?それにお前の香は花のようだぞ」 「やぁぁ!やめてっ!」 日頃の交わりを示す言葉に絶句したレフラの身体をギガイが抱え込んだまま、上からのし掛かるように抑え込む。汗をかいた首筋を舐められ、スンッと鼻を鳴らされれば羞恥でレフラの顔が真っ赤になった。

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