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第25 移り香を咎めて 4

宥めるように袂を握る手をギガイの掌が包み込む。 「白族の魅毒は媚薬だからな、このままではお前がツラくなる」 「びやく……えっ?」 その言葉と同時に心臓がドクッと跳ね上がった。 言葉で認識したせいか、それともたまたまタイミングが重なっただけなのか。ドクドクとした鼓動と一緒に身体が熱くなり始めていた。 「えっ、な、なんで……??」 急激に上がっていく熱に合わせて、後孔からもクチュッと濡れた感触がする。そんな急激な身体の変化に付いていけない心はパニックに近かった。 「やっ、だ、な、なんで??」 思わずギガイに縋り付く。だけどギガイから立ち上る移り香が直接鼻腔を刺激すれば、途端に熱は跳ね上がっていく一方なのだ。そんなレフラの状態が手に取るように分かるのだろう。 「やっぱり効果が出たか。匂いから離れた方が良い。少し身体を離していろ」 腕の分だけでも離れきれるように、ギガイがレフラを促した。その言葉がギガイの配慮だということが、分からないわけじゃない。でも混乱の中で、それはますますレフラを不安にさせるだけだった。 ギガイの身体にしがみついたまま、縋るような目でレフラはギガイの方を見上げて首を振る。そんな想いが通じたのか。 「あと少しだ待ってろ」 眉を寄せながらレフラの目を見つめ返したギガイが、回した腕に力を込めた。 そのまま見慣れない場所へ来たギガイが扉をガチャと開ける。その中は誰かの私室なのだろう。落ち着いた調度品で整えられた空間だった。 「こ、こは……?」 「宮を使うまで、利用していた私室だ」 スタスタと奥に進んだギガイが、アーチ状にくり抜かれた右手の壁を抜けて、再び別な扉に手を掛ける。開かれた中には宮にあるような大きな寝台が存在していた。その寝台の上に身体を横にされる。 「少し待っていろ」 「まって、ギガイさま、まってーーーっぁあ!!」 そのまま離れようとするギガイへレフラが慌てて身体を起こそうとした瞬間、走った刺激にマットの上に崩れ落ちた。 「匂いを落としてくるだけだ。このまま大人しく待っていろ」 レフラの顎をすくい上げたギガイが唇を軽く食んでくる。それだけで甘い痺れが腰に響いて鼻から声が抜けていく。 「続きは後だ。とりあえず大人しくしていろ」 目を合わせながら告げられた言葉の意味を理解して、レフラがコクッと頷いた。その頭をひと撫でして浴室へと消えていくギガイの背を見送った。 その間にも増していく疼きにレフラはシーツを握りしめる。痛いぐらいに張り詰めている下半身へ手を伸ばしてしまうことがないように、必死に耐えながら寝台の上で身悶えるのは、始めの頃を思い出させるようだった。 「……っふ、ぅ…ぅぅ……やだっ…ぎが、いさま……やだっ……」 あの頃の感情に引きずられてボロボロと涙が零れてくる。独りはイヤだと心が慄き震えていた。身体の苦しさと孤独のツラさに耐えるように、レフラはシーツを握りながら身体を小さく丸め込んだ。

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