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第113 琥珀の刻 5

再びギガイの腕から降ろされたレフラを囲もうと、3人が動き出す。ギガイがわずかに手を上げて、その動きを制止した。 「お前達には用がある。リュクトワス」 「はい」 「レフラに付いて、そこの男と確認してこい」 「かしこまりました」 「3人はこのままここに残れ」 「はっ!」 「他の者達は全て、可能な限り離れていろ」 「かしこまりました」 手早く周囲へ指示を出し、ギガイがリュクトワスへ促すように合図をする。 いつものように護衛の3人がそばに付くと、レフラも思っていた様子だった。戸惑ったような表情で、レフラがリュクトワスを見上げていた。 「では、レフラ様。行きましょう」 「はい、よろしくお願いします」 リュクトワスはギガイの側近として、そばに置き続ける数少ない臣下なのだ。その分だけ、レフラにとっても、馴染みが深い者ではあった。 それでも常にレフラのそばに居ることを許し、レフラと行動を共にしている3人とは、やはり勝手が違うのか。レフラが心許なさそうに、チラッとギガイや3人の方を振り返っていた。 その視線をあえて流して、リュクトワスへ顎でしめして指示をする。スッとギガイとレフラの視線上に、リュクトワスがさり気ない仕草で回り込む。 ギガイへ訴える術がなくなり、リュクトワスに促されたレフラが、諦めてそのまま歩き始めたようだった。 (やはり、だいぶコイツらには、馴染んでいる様子だな……) それはレフラにとって3人が、すでに『特別』な存在に成っているということだ。分かりながらも、その言葉で考えれば不快さが増してしまう。 ギガイ自身がレフラのために宛がった者達なため、日頃は目を瞑っている。本当なら、こうやって突き詰めて考えたくはなかった。 (だが、背に腹は代えられないのだから、仕方がない) レフラが離れた事を確認して、ギガイが呼びつけた3人をギロッと眺めた。緊張した面持ちで、3人がギガイの前に膝をついている。 (あの様子なら、こいつらならば、多少は効果があるだろうからな) ギガイが内心で、大きく溜息を吐いて、立ちあがるように促した。 「はっ!」 「もう少し近付いてこい」 「しかし……」 レフラとリュクトワス以外に、ギガイが示す距離まで今まで近付いた者はいなかった。その為か、本当に良いのかと、躊躇う雰囲気が3人からは伝わってくる。 「構わん。むしろ、あまり周りへ聞かれることも|憚《はばか》る内容だからな……」 いつにないギガイの様子に、3人が戸惑いながら距離を詰めてきた。 「この後に店を出て外を回るが、レフラの動向にいつも以上に気を払え」 「かしこまりました」 「移動中だけは、諦めさせてある。だが、それ以外の時ならば、今日はアレの行動は制限できんからな」 困った、と顔を顰めながら、指先で眉間を揉み込んだ。今日の視察はまだ始まったばかりなのだ。しかも、外に立ち並ぶ露店の方が、様々な物が並んでいる。恐らくここ以上に、レフラの興味を惹く物は多いはずなのだから。 (まさかこんな風に、ままならない状況に悩んで、頭痛を感じる日が来るとは……) 「はぁーっ」 今まで思ったことさえなかったのだ。 殺し損ねた溜息を、大きく吐き出して、ギガイは改めて3人を見遣った。

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