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第158 それぞれの想い 6

「では、私達の幸せと引き換えに、幸せを失ったレフラ様を見て、私達は幸せだと思いますか?」 「…………」 そんな中、続けて聞こえたラクーシュの言葉に、レフラは目を見開いたまま固まった。 3人がどうしてこんなに怒っているのか、何を本当は言いたいのか。ここまできて、ようやく、レフラも分かったのだ。 だって、嫁ぐまで、レフラを気に留める者は居なかった。レフラの幸せどころか、心へ想いを馳せる者も居なかったのだ。 誰かの幸せとレフラの幸せは、いつだって別々に存在していて。レフラが幸せであろうと、なかろうと、それは誰にも影響しなかったのだ。 だから、レフラ自身でさえ、自分の幸せを1番に考えたこともなかった。 「かつてレフラ様を、自分達の幸せのためだけに、供物のように扱った者達と、私達は同じですか?」 「レフラ様の幸せを犠牲にして、平然としている者達だと、お思いですか?」 「ご一緒に過ごしてきた時間は、その程度の価値なのですか?」 3人の言葉が心の底に染み込んでいく。 渇いていた土に水が染みるように、一言一言が吸い込まれる。 「そろそろ誰かの為に、生きるのは止めて下さい」 「レフラ様自身の幸せのために、ちゃんと生きて下さい」 「レフラ様が誰かの幸せを願うように、レフラ様の幸せを願う者がいるんです」 畳みかけられた言葉に、レフラはもうダメだった。 「……ごめん、なさい……ごめ、ん、なさい……」 込み上げてくるものに喉がしまって、上手く声が出なくなる。 「また、おそばでお仕えしても、宜しいですか?」 「……は、い……いっしょ、に……いたい、です……」 「もう、こんなことは、控えて下さい」 「……はい……もう、しませ、ん……」 「ちゃんと、ご自身の幸せを、1番に考えて下さい」 「……は、ぃ……」 何も言葉が出なくなり、コクコクって頷くだけが精一杯のレフラの身体を、後ろで黙って見ていたギガイがグイッと抱き上げた。 「……ぎが、い、さま……ごめん、な、さい……」 「あぁ、もう良い。1度目は許すのだろう?」 ギガイの過ちに、かつてレフラが言った言葉を、なぞった言葉なのだろう。レフラは少し笑おうとして、そのままクシャッと顔を歪めた。 やっぱり、ギガイの傍では、いつもの自分では居られないのだ。 今まで、一滴も湧き上がることがなかった涙が、いとも容易く、次々に両目から溢れ出る。ただでさえ、喉が引き攣って上手く言葉が出ないのに、ますます声は裏返ってしまった。 「……ぎがい、さま……ぎがい、さま……いっしょに、いたい……わたしも、し、あわせ、に、なり、たい……」 それでも伝えたくて、何度も何度もひっかかりながら告げた言葉は、しっかりとギガイにも、3人へも意味が伝わったようだった。ホッとしたような空気が、それぞれから伝わってくる。 「そうだな、私もまだ生まれてもいない子などより、お前が笑っている方が良いからな。お前を想う者のためにも、お前自身を愛しめ」 レフラは伸び上がって、ギガイの首筋にしがみ付きながら、何度も何度も頷いた。

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