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第三章・13

 せっかく二人で暮らし始めたのに、夜の営みがさっぱりお預けになっている。  ハンドルを握り帰途に就きながら、ふとそんな事を考え衛は独りで赤くなっていた。  衛の勤務する高等学校は、陽の花屋からバスで6つの停留所先にある。  自宅から花屋までは、バスで7つ先。  自宅と衛の職場の、ほぼ中間点に陽は勤めていた。  送り迎えをしてやろう、と衛は自転車通勤を返上し、マイカーを買っていた。  だがしかし、時折、というよりほとんど毎日のようにこんなLINEが寄越された。 『ごめん。今日、一緒に帰れない』  またか。  二人同じ屋根の下に住んでいるというのに、顔を合わせる時間がやたら少ない。 『また歓迎会か?』 『残業だよ、バカ! 馬鹿バカ馬鹿バカ、衛の馬鹿!!!!!!』  

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