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第五章・12
衛の妄想は広がり始めると、とどまることを知らず、暴漢はいつしか複数になっている。
あの生意気な猫が数人がかりで犯されていると思うと、冷汗と共に妙な興奮まで覚えてしまう。
このままではいかん、と彼は急いだ。
部屋着のスウェットのまま、竹刀を持ち出した。
実家は道場だったため幼い頃から剣道に励み、今では段位を取得している。
車のキーを手にした時には、すでに暴漢の中に殴り込んだ気がしていた。
「お前たち、そこまでだ!」
「あぁ? 何だ、お前」
「衛!」
「大丈夫か、陽」
「おっと、お楽しみの邪魔はさせねえぜ」
「やっちまえ!」
「来るなら来い!」
「衛、気をつけて!」
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