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第五章・14
「ただいま~、って。あれ? 衛、どうしたの?」
我に返ると、玄関に陽が立っている。
「え? あ!?」
そして彼のやや後ろには、見知らぬ若い男が立っている。
こいつに送ってもらったのか、とすぐに気付いた衛は、自分の猥らで珍妙な妄想に顔から火が出る思いだった。
恥ずかしい空想に耽っていた自分を立て直し、そして誤魔化すために、衛は頑張ってできるだけ低い声で静かに喋った。
「遅かったな。心配したぞ」
「うん。でも、送ってもらったから」
見ると、くだんの若者が軽く会釈している。
その風貌に、衛は気づかれない程度に眉をひそめた。
若い。
だが、スレている。
世間をよく知っている、といえば聞こえは良いが、どこか遊び人の空気を纏っている。
陽の友人にするには、少し感心しなかった。
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