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第七章・19

「あ!」  これは。  この心地は。 「抱き枕だ、これ。お魚の抱き枕!」  頬ずりすると、いい香りがする。  これはきっと、バラの香り。 「僕が魚座だとか、バラが好きだとか、話したっけ?」  お前の事は、何でもお見通しだ。  そんな衛の声が、聞こえてくるようだ。 「そうだ! 名前付けよう、この子に。……マモル! 今日から君は、マモルくんだ!」  ご丁寧にもう一度カーテンを閉めなおし、陽は再びベッドに横になった。  隣には、衛ならぬお魚の抱き枕・マモルくんがいる。 「おやすみ、マモルくん。大好きだよ」  マモルくんで練習して、いつかきっと素直に衛へ『好き』って言えるようになるんだ。  バラの香りに包まれて、優しい肌触りのマモルくんを抱きしめて、陽は眠った。  衛の夢が見られますように、と心で唱えて眠りに就いた。

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