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チョコレートは白がお好き

人間やれば出来る、なんて誰が言い出したのだろうか。 甘さと苦さが混じる空気を嗅ぎつつ炭と化した黒い物体がこびり付いた鍋とガスコンロを目の前にして俺は頭を抱えた。 先月貰った可愛過ぎるラッピングを纏った可愛過ぎる甘いお菓子。どんな顔であんなメルヘンなものを作ったのだろうかと想像すれば、抱えたはずの頭は愉快に揺れた。 毎日あれだけ手の込んだ色んなキャラクターに似せて詰められた美味い飯、イベントごとがあれば必ず何か作ってきてくれる。いくら気にするなと言われても、貰っているばかりなのは格好悪い。 だからお返しの日である明日、そこで日頃の感謝を……なんて思っていたのだが。 「…人間やろうと思っても出来ないものはある、だな……」 こんなことなら事前に練習しておけばよかったと後悔しつつ目の前の黒い悪魔を片付けることに専念した。 *** 4限の終わりを告げるチャイムと共に教室を後にし向かうは校舎の一番高い所。まだ風も冷たく春とは決して呼べない寒さだったが、もうすぐ暖かくなると俺は知っている。 教室を出て廊下を歩き、人がいる所はゆっくりで人がいなくなると慌てて階段駆け上がって……ああそろそろ着くなと思うと同時に勢いよくドアが開いた。 「櫨っ、……おい?」 定位置に座っているだろう俺に向かって掛けた声は虚しく空へ消え、残るは拍子抜けした間抜けな待ち人。いない俺を探して辺りをうろついているが残念なことに今日俺は一番高いところにいるわけで。 そんな様子を上から眺め楽しんでいたが、いないと思ったのか引き返そうとする後頭部に向かって声を掛ける。 「もーえーチャン。何処行くの?」 「なっ、櫨てめぇ!その呼び方止めろっつってんだろ!!」 「えーいいじゃん、誰もいないんだし。可愛い名前してんだから呼ばなきゃ損デショ?」 「殴るぞてめぇ。」 殺気立った顔でドア横の梯子に手を掛けるけど殴る気なんかないのは分かってる。口も顔も恐いけど本当はとても優しい奴だ。今だって降りろとは言わず自ら登って来てくれるんだから。 貯水タンクに凭れて座る俺の向かいに胡座をかくと先程までとは全く違い、何故か関心した表情でまじまじと見てきたかと思えば頭を下げ謝罪してきた。 「櫨、お前…料理出来たんだな。てっきりなにも出来ない奴だとばかり思ってて悪かった」 勘違いするのも無理はない。毎日当たり前のように弁当を作ってもらってた俺が昨日こいつに「明日は俺が作ってやるからお前は手ぶらで来い」と言ったのだから。 「別に?だって俺なんも出来ねぇし。だからこれ、ほら」 「……は?」

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