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白髭の悪魔たち

幼い頃、俺はこの季節が嫌いだった。 当たり前のように話貰ったプレゼントの話をする周りの奴らが憎く、そして羨ましかった。今度こそ自分達の所にも来てくれますように、と弟と二人で必死にお願いをしたけれど願いは叶わなかった。 次の年から俺はあいつが来た、と言う奴らの顔を見るのが嫌で弟と二人、幼稚園を休む事にした。 そしてあの時から今まで一度も俺たちのところには、あの赤い服を着た白髭のじじいは来ていない。 けれど今更あのじじいに来て欲しいとも思わない。あの時来てくれなかった理由を俺は知っている。 そして今も学校を休んでいるのは…… 「あれ、匠?」 「……宝?」 バイトを終えてぼんやり考え事をしながら家への道を歩いていると突然かけられた声に振り向けば派手髪の弟が立っていた。 「今帰り?つか遅くね?」 「人の事言えんのかよお前…ちょっと買い物してたんだって」 ほら、と差し出して見せたのは二人で食べようと思いこの日の為に予約しておいた人気店のタルト。シックな紙袋に筆記体で書かれている店名を見るなり宝の目が輝く。 「ちょ、それっ…マジか!」 周りには多くの人が行き交っているのだが、そんな事も気にせず声を弾けさせ紙袋を指差す。 珍しくはしゃぐ弟を目にし、女まみれの店内に羞恥を耐え受け取りに行った甲斐があったと小さく笑みを零す。 しかしその晴れた表情は徐々に曇り始め、最終的には顔が見えないくらい萎れてしまって。 「宝?どうした……?」 「や、マジ悪いんだけど…それ今日は一緒に食えねぇわ」 予想もしていなかった言葉に目を見開き思わず固まる。 紙袋を持つ手が緩むのを見た宝は俺が落とさないようにと持ち手を握り込ませてくれて。 至近距離にある顔は眉が下がり歪がんで見えた。 「今の今まで黙ってて悪い…明日は」 「いや、いい。俺の事は気にしなくていいから」 「……匠」 最後まで聞きたくなくて宝の言葉に被せるよう早口で告げる。ゆっくりと目を合わせ痙攣らないよう気を付けながら口角を上げ目を細めた。 そんな俺の意図を読み取ろうと覗き込んでくる宝の胸を軽く突き、これ以上近寄らないよう突き出した手で距離を取れば何かを汲み取ったのか下がっていた眉が釣り上がり眉間に深い皺が寄せられて。 その皺を突き出した手で解すように揉んでやれば深い溜め息を吐くものの抵抗はせず、されるがままで…… 「大丈夫だって、食べずにちゃんと待っててやるって」 「は?別にそういう意味じゃ…」 「解ってるから。ほら待ってる奴いるんだろ?早く行ってやれよ」 手を離し一歩下がって態と別の事を言うと不満と不安の色を浮かべ言い淀む宝を急かし先に背を向けた。

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