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青波さん
「あの、みなさん〜私のこと、お忘れではないでしょうか?」
甲高い声と女口調の言葉が聞こえてきたので、俺は自分の席の隣を見る。
黒いギザギザ頭
切れ長の目
尖った鼻
全体的に薄い唇
それらが細長い輪郭に収まっている青波さん……里田青波 がジトっと見ていた。
「忘れてたわけないじゃないっすか、青波さんのこと」
ニコニコの笑顔を寄せると、嫌そうな顔をする青波さん。
「近づかないで、そしてその口調やめなさいよ」
「俺の方が先輩っすもん……新人さん♪」
「なっ、私の方が年上ですわよ!」
青波さんは年上の新人……そして一応男。
でも、この人は只者ではないんだよな。
「で、どうだったんすか? 世界大会は」
「もちろん、優勝に決まってるじゃないの」
ふふんと自慢気に鼻を鳴らす青波さん。
「すごいじゃないすか!」
俺がイエーイと手を上げてハイタッチをせがむと、苦笑いしながらも付き合ってくれた。
「チャンピオン……おめでとう!」
伊月さんに拍手をされたら、青波さんはいやいやと言いながら勝ち誇った顔をしていた。
「さすが僕の弟子ですね」
全く関係ないのに自慢気な顔をするゴン主任にみんなで突っ込みを入れる。
青波さんはプロのeスポーツ選手……以前はゲーム会社にいたが、スポーツに専念するために半年前に入社した。
ゲーム界では有名な人らしく『指神様』と崇められているとか。
シューティングからバトル系、スポーツものまでなんでも出来るらしい。
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