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第七章・14
「大丈夫?」
蕩けて朦朧とした意識に、優しい声が響く。
茜は、丞が髪を梳く指先にさえ震えた。
「大丈夫、です……」
大丈夫。
大丈夫だった。
果てる時に、兄さん、なんて声を上げることはなかった。
「あの、梅宮さん」
「何?」
「その、ちゃんと感じてくれましたか?」
僕ばかり何度も……、恥ずかしい……。
「すごく悦かったよ」
丞は、茜に口づけた。
もう、強張ってはいない彼の唇。
柔らかく溶けそうな茜の舌を味わいながら、丞は瞼を閉じた。
これで良いんだ、と繰り返し何度も心の中で唱えていた。
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