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 午後九時―― 「あ、いたいた! 貴方が噂のチェーン・ストリッパーね。思ってたよりもずっと若いわ。それにずっと美しくて美味しそう! いやだぁ、とってもキュート」 「………」  金髪で巨乳で赤いドレスにハイヒール……だが、俺よりずっと大柄でどう見ても男にしか見えないインタビュアーにマイクを向けられ、俺は顔を引き攣らせながら「はあ」とだけ答えた。 「突然彗星のごとくダチュラに現れたって聞いたわ。ここに来る前もダンサーの仕事を?」 「一応……多分」  間近で何度もシャッターが切られる。角度を変えて何枚も、何枚も。 「お名前は亜蓮くん、でいいのよね。チェーン・ストリッパーと呼ばれる理由となったその首輪の鎖について、お聞きしても良いかしら?」  今となってはそのきっかけも、何故付けているかの理由も分からない、この鎖。分からないけどどうしても外したらいけない気がして、今日も結局付けている。 「これは貴方のアイデンティティ? 何か秘密が?」 「……いや、ただカッコいいと思ってしてるだけ」 「率直な答えね、ありがと」  その後も皇牙との関係や前の仕事のことを質問されて、返答に困る部分に関しては適当に話を合わせておいた。事前に皇牙からインタビューが来ることは知らされていたが、全部適当でいいと言われていたからだ。別の新宿から来たなんて言えば、話は更にややこしくなる。 「ありがとう。今夜もナイスダンスを期待してるわ。――あ、最後に一つだけ。貴方のストリッパーとしての、今後の目標は?」 「………」  ストリッパーとしての目標。 「……そうだな。人生を懸けて」  俺が躍る理由。 「一つでも多く、まともな孤児院が建てられれば。それで」 「は、はぁ?」

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