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 いや、この世界だけじゃない。俺がいた世界でも子供が犠牲になる事件は毎日のように起きていた。国単位でいえば今もニコラ達のようにスラムで暮らす子供が大勢いる。世界が違かろうと環境がどうであろうと同じなんだ。  ……そんなこと前から分かっていた。だけど俺には関係のない話だからと、普段はそんな問題を頭に浮かべることさえしなかった。自分の今日で精一杯なのに、他人の明日なんて気に掛けている余裕はなかった。 「………」  この沸き上がって来る怒りにも似た感情は、ニコラの話を聞いたせいだけじゃない。初日に「ダチュラで働く子供達」の現状を目にした瞬間から、常に俺の心に薄い影を落としていたんだ。 「亜蓮。皇牙の前の旦那さんとの間に子供がいるって、知ってる?」 「あ、ああ……何か聞いたけど。養子縁組したとか」 「皇牙って、ああ見えて子供好きなんだよ。俺とステラは一生ここで踊るって決めたんだ。皇牙の役に立ちたい。新しい人生をもらったんだから」  そう言って笑うニコラの姿からは、腹を空かせて泣いていた過去なんて微塵も感じられなかった。 「だから俺は、自分の人生を懸けてハッピーに踊る~! ……けど、緊張しちゃってさ。どうしてもステラみたく出来ないんだ」  俺は小さく笑って、ニコラの手を取った。 「亜蓮?」 「前に俺がいた所ではそういう時、こうやって手のひらに『人』って字を三回書いて、飲み込むんだ。そうすると緊張が解れるんだって」 「俺、読み書きできないよ」 「簡単な文字だ。こうで、……こう。これを三回」 「本当に? これだけで?」 「それでもまだ緊張するなら、俺のことを思い出せ。ステラのこと、ライのこと、皇牙のことを思い出せ。皆が応援してるって思えば、心強いだろ」 「へへ。そっちの方が効きそう。ありがと、亜蓮!」  俺も飲んでくる、とニコラがスタッフルームを出て行った。  新しい人生をくれた皇牙のために――人生を懸けて踊る、か。

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