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第1話

夜中にふと目が覚める。 ここは冷房の涼しさが心地いい、学校の教室。 今はGWの泊まり込みの合宿中で、 バスケ部みんなで教室で寝ていた。 俺、早川裕太(はやかわゆうた)以外に起きている奴は誰もいない。 何となくトイレに行きたくなり、目を擦りながら体を起こすと、隣の布団から小さな声がした。 「...祐太?」 声の方へ顔を向けると、谷口弘弥(たにぐちひろや)が目を細めてこちらを見ていた。 「あ、わりぃ、起こした?」 弘弥を起こしてしまったかと焦り、彼よりも小さな声で謝る。 「いや。...眠れないのか?」 「たまたま目が覚めて。トイレ行こうとしてただけ」 「...俺も行く」 弘弥も身体を起こし、2人でそっと教室を抜け出した。 今は8月。夜中ではあるが、一歩教室を出ると廊下はかなり蒸し暑かった。 「あーっついな!」 「夏だからな」 「そうだけど。さっきまでが涼しすぎたから余計にさ...」 「確かにな」 そんな話をしながらトイレに向かう2人。 「...なんか、夜の学校って不気味だよな。誰もいなくって無駄に静かでさ...」 どことなく周りを警戒するようにしながら歩いていたら、弘弥に鼻で笑われた。 「何、怖いの?」 「ち、ちげーよ!!!」 「強がらなくてもいいんだぞ」 「だから別に怖くねぇって!そもそも幽霊とかそんなん信じてないし...」 弘弥から目線を逸らしたその時。 「わっ!!!」 「うわっ!!!!」 耳元で突然弘弥が脅かして来て、裕太は思わずしゃがんでしまった。 「...ひーろーやー」 顔を赤くしながら弘弥を睨む。 「悪かったって」 弘弥がクスクスと笑いながら手を差し伸べてきた。 「お前ほんっといい加減にしろよ!!」 弘弥の手を取り立ち上がる。 「だってお前明らかに虚勢張るからさ」 トイレから出るまで弘弥の笑いは止まなかった。

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