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第12話 後日談 松村side

夏休みが終わり、2学期が始まった。 現在は昼休み。 5時間目の授業で使う実験道具を準備していると、理科準備室の扉がノックされた。 「どうぞ」 「失礼しまーす」 丁寧な挨拶と共に部屋に入ってきたのは、裕太だった。 「裕太君、久しぶり。黒くなったねー」 「プールとか…旅行とか。結構遊んだので。…これ、お土産です」 裕太は手に持っていた鞄からお菓子の入った小さな箱を松村に渡した。 「わざわざここまでしなくていいのに…」 「いえ、先生には大分お世話になったので」 裕太の不敵な笑みに松村は思わず苦笑した。 「ところで…、弘弥、あの後先生の所へ来ました?」 「………」 裕太が訪ねてきた時から何となく予想していたことを聞かれ、松村はふっと笑う。 「やっぱりその話か」 「はい、もちろん」 松村は弘弥に椅子を勧め、実験道具の準備をしながら話を進めた。 「あの日の翌日…、部活終わりかな?俺の所に殴り込みに来たよ。「俺のことはほっとけって言っただろ」って」 「あはは、僕にはもっと最低な事をしようとしていたくせに」 「ほんとそれな。あーそれで帰りには「裕太には一切手を出すな」だって」 「可愛いなあ…本当に可愛い」 うっとりした表情で呟く裕太を見て、こいつも中々にやばい奴だったことを思い出す。 そもそも、噂を聞きつけて真相を確かめに来たのは裕太の方が先だった。 「先生」 「?どうした?」 「七不思議の”真夜中の理科室”って、先生が出どころなんですか?」 「………」 驚いた。勝手なイメージだったが、そういうことに関しては自分から首を突っ込むタイプには見えなかったからだ。 だが、この少年の乱れた姿は見てみたい。 俺の快楽への好奇心を止める理由は無い。 「そうだと言ったら?」 彼がどんな反応を見せるのか興味があった。 冗談だと笑い飛ばすのか、見てみたいと好奇心を持っているのか。 あるいは、エロ漫画のように自分も犯されたいと望むのか。 しかしその答えは俺の斜め上をいくものだった。 「好きな人に犯されたいんです。それで、相手も犯されるところを見たい」 それから俺との交渉は成立。 周りの友人らを上手く使い、ゆっくりと弘弥を罠へ誘い込んだ。 自分は何も知らない、無知で明るい友人を演じながら。 ちなみに交渉内容は触手を貸す代わりに近くで鑑賞する、というものだったが……… 「裕太」 「はい?」 「何か今回俺だけいい思いをした気分なんだけど…」 「ああ、僕が弘弥に挿れられなかったからって?」 「そう」 「いいですよ、今後の楽しみにしておきます。でも今回は…」 裕太はゆっくりと目を細め、ふっと笑った。 「弘弥が自分の意志でキスをしてくれましたから。十分な成果です」 彼の横顔を見て、手を止めた。 裕太が真相を突き止めたあの日。 そんなに好きなら他人を関わらせたくないと思うものじゃないかと聞いたら、 彼は笑ってこう言った。 「抗えない何かに流されるのも、それを振り切って一歩を踏み出すのも、 どっちも素敵だと思いませんか? ………先生なら、僕の気持ち分かってくれると思うんですけど」 彼の美しい微笑みに思わず見とれていた。 「ま、お前がいいならそれでいいけどさ。 ……じゃあ裕太君、授業始まるからもう戻りなさい」 「はーい」 扉を閉める直前、彼はこちらを見て微笑んだ。 俺も微笑み返し、扉が閉まる。 彼はもうここへは来ないだろう。 一夜限りの、なんと甘美で儚い関係。 もう少し見たかった気もするが、きっとこのくらいがちょうどいい。 「ああ、ごめんな。あの子はもうここへは来ないよ。今日は俺が相手をしてあげる」 準備室の棚がそっと開き、松村の足へするりと絡みつく。 彼は触手をなだめてから扉を閉め、準備し終えた実験道具を手に持った。 とある学校の七不思議。 ”真夜中の理科室で何かが這いずり回る音がする” あなたも真相を確かめてみたくはありませんか? ――――――――――END――――――――――

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