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第78話

「ゴムをつけるのに何時間かかってるんだ」 「……く、ぅううう」  上履きでペニスを踏みにじられた。仁科はキッと戸神を()めあげると、猛りの根元までコンドームで覆った。  そこで、しばし悩む。音楽室でうがたれたさいは教卓がその舞台となった。  ならば、今日は文字通り調理台の上で料理の仕上げといく気なのだろう。  おれは、どうせまな板の鯉だ。自嘲気味に嗤い、調理台にあがって身を横たえた。  ところが足をくの字に立てて腰を浮かせ気味にすれば、冷笑を浴びた。 「ふぅん、正常位でやりたかったんだ。けど、オーソドックスなのってつまらなくない?」  くやしまぎれに床にすべり下りて早々に、腕を摑まれた。そのまま戸神と向かい合って立つ位置につれていかれた。  ことさら凛と背筋を伸ばすと、花が閉じて開いた拍子にくちゅりと濡れた音が響く。  仁科があたかも酢じめにされる寸前のサバで、小骨の取り忘れがないか確認するふうに戸神が顔を覗き込んでくるから、なおさら気恥ずかしい。  仁科は、うなだれた。タコ糸が食い入って醜くくびれているにもかかわらず、固く張りつめたペニス。  己の浅ましさを象徴するような光景に頬が紅潮する。しかし、あと少しの辛抱だと思うと胸が高鳴る。  ネクタイがほどかれた。反射的に股間を両手で覆うと、その手が摑み取られて戸神の首筋に持っていかれた。 「しっかり巻きつけておけ」 「いや、だけど……」  口を真一文字に結んで眼鏡を押しあげた。早く搔いてくれ、と内奥がわめき散らす状態で下手に逆らって、おあずけを食わされたら泣くに泣けない。  にもかかわらず、教師としての矜持が邪魔をする。ひと回りも年下の教え子にしがみつくことに今さらながら抵抗を感じて、身をもぎ離した。  戸神はすぐさま実力行使に出た。膝の裏に手を添えて仁科の右足を掬い上げ、いきおい、よろけた躰を抱き寄せるとともに、バレエの一ポーズをとる形に広がった足の間に下肢を割り込ませていった。 「転ぶ……!」 「だぁから、ぎゅっと抱きつけばいいだろ」  腕は宙をさまよい、左足がぐらつく。仁科はため息をついた。確かにこの場面で意地を張っても、何か得をするどころか尻餅をつくのがオチだ。

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