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第77話

 ふと思う。今朝、HRの時間に出欠をとりがてら抜き打ちで持ち物検査を行い、クラスメートの前でコンドームを没収してやれば、さすがの戸神といえども顰蹙(ひんしゅく)を買っていただろう。  いや、スクールカーストに君臨する立ち位置からいって、ウケ狙い、と言えば逆に英雄視されていたかもしれない。  ともあれ現在(いま)は、瑣末なことにかかずらっている余裕はない。  指の守備範囲外をとっくりと搔いてもらう以外のことなど、どうでもいい。  渇望の色をたたえた視線の先で、屹立が隆とみなぎる。仁科は数日ぶりに食べ物にありついた思いでコンドームをつまみあげた。  しかし気が急くあまり指が小刻みに震えて、封を切る程度のことにひどくもたつく。それでも精液だまりをきちんと指で押さえて、空気を抜きながら先端にかぶせていく。 「意外につけ慣れてるっぽくて、おとなの貫禄って感じ」  スマートフォンが手元に向けられた。からかうふうに襟足をひと撫でされれば、嫣羞(きょうしゅう)をふくんでペニスが跳ねた。  口辺に苦いものが漂う。アナルセックスになど興味がない、と啖呵を切った舌の根も乾かないうちに、それで貫かれるのを前提としてコンドームをつけてやる。  これでは偽善者の(そし)りを免れない。  コンドームをずり下げていく手が止まる。  百歩譲って前回の件に関しては被害者面ができても、今回は事の経緯(いきさつ)はどうあれ搔いてほしいと望んだ時点で共犯者になり下がった。  そうだ、おれは教師の風上にも置けない。  しかし教え子に蹂躙されるというシチュエーションは、インモラルという隠し味が旨みを引き立てるおかげで、いっそう味わい深いものになる。  うってかわって口許が陶然とほころび、巻き込み防止にてきぱきと下生えを撫でつける。  確かに無理やり躰を拓かれて、かなりの痛手をこうむったことは記憶に新しい。なのに半分がたピンク色の衣をまとった雄渾に食指が動いて仕方がない。  好物は最後に食べる主義だ。待ちきれないと、むずかる内奥はひとまず放っておいて、ねぶってみるのはどうだろう……。

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