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第80話

「痛っ! もっと、ゆっくり……」 「あんまり、のんびりやってると先生たちが捜索隊を編成して捜しにくるかもよ。『鞄を置きっぱなしで仁科先生はどこに雲隠れしたんでしょうね』──って。あっ、そうか!」 「ぅううう、ああああ……っ!」  ひと息にえぐり込まれると鳩尾のあたりまで〝戸神〟に埋め尽くされた、という錯覚に陥る。糸で吊り上げられたように背筋がぴんと伸びる。 「婉曲話法ってやつか。ひと晩じゅう俺とやり狂いたいって意味なんだよな」  言下に、かぶりを振った。やり狂いたいどころか、すでにオーバーフロー気味だ。  だが馬銜(はみ)をかませて荒馬を御する要領で、右の膝の裏に腕が差しこまれているために、くずおれることさえ許されない。  ただでさえ人体の構造上、そこで番うにあたっては仁科に一方的に負担がかかる。  ところが戸神は、 「貴明は嘘つきだもんな。『痛い、嫌だ』を真に受けて抜いてやったら、『なぜ抜く、空気を読め』って逆ギレするね、絶対に」  などと、うそぶいて悪びれたふうもない。そこは形状記憶合金さながら〝戸神の形〟に合わせて伸び縮みする、といいたげにガムシャラに突き進む。 「っ……う、ん、ぐ……ううううっ!」  交わりが深まるにつれて、いちだんとよろけがちになる。陽根がなおも狭路を遡っていけば左足になおのこと負荷がかかり、こむら返りを起こす予感に痙攣しはじめる。  仁科は首筋に回した腕をしっかりと結び合わせると、制服のシャツに包まれた肩口に顔を伏せた。  これでもかと言わんばかりに痴態を演じておきながら、今さら恥ずかしがるのはナンセンスだ。  だが教師として……それ以前にひとりの男として、顔を見られながら刺し貫かれるのは、くやしさもひとしおだ。  もっとも、顔をあげろと命じるふうに耳たぶにかじりつかれると、〝戸神〟をいざなうように内奥がはしゃぐのだが。 「……無理だ、戸神、股が裂ける。せめて座らせてくれ……」 「挿れてる途中でギブアップって、だらしないなあ。根性なさすぎ」 「ぅ、っ、ああっ!」  乳首をひねりつぶされると、ぐちゅりと筒全体がさえずる。肉叢(ししむら)がしなだれて猛りを包み込む。

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