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第81話
「ビギナー用にかなり手加減してやってるんだ。ごちゃごちゃ、うるさい」
「……っ、ぁっ、ああ……っ!」
奥の奥まで征服してのけしだい、恣 にふるまう。
それの予告編のように、ひと突き、ふた突き、と律動が刻まれた。
仁科は口を引き結ぶと、片足立ちに床を踏みしめた。凌辱される、という特異な経験を通して学んだことが役立つ日が訪れるとは皮肉な話だ。
努めていきむと入口がゆるみ、いくらか熱塊を受け入れやすくなるはず。
「ぁ、ああ……ん、ぅ、あ、……ああっ!」
つかえつかえだが、怒張は着実にゴールをめざす。ふたりの呼吸がいくぶん合ってきはじめて程なくして、ファスナーが尻の丸みをかすめた。
それは切っ先が深みに到達した証しだ。
「大切なムスコを孫の手の代わりに提供するとかって、俺って底抜けのお人好し」
聞こえよがしにぼやいてみせると、スマートフォンを結合部分に持っていって続けざまにシャッターを切る。それから、花芯に隙間が生じるまで双丘を割り開いた。
さらに崩れ落ちそうになる躰を二回、三回と揺すりあげ、白皙の面 が苦痛にゆがもうが、おかまいなしに自身のおさまり具合を執拗に調節する。
そうやって満足がいくまで仁科を呻かせたあとで、インフォームドコンセントを行う医師のような明快な口調で付け加えた。
「後ろに指を突っ込んだのは一回こっきりなんて嘘っぱち。慣らすのを日課にして拡張しなきゃ、スムーズに挿入 るわけないだろ」
ぐり、と突き上げた。
「あ、っう! 本当だ、魔が、魔がさして自分でいじったのは一回だけだ……!」
針千本呑ぉます、と口ずさむのに合わせて突き入れられて眼鏡が躍る。
音楽室を舞台に暴虐の限りを尽くされた一件は、悪夢以外のなにものでもない。とどめに口淫を強要されたのは、とりわけつらい出来事だった。
フラッシュバックに襲われるたびに吐き気をもよおす。だから自分は、いわゆる黒歴史が甘酸っぱい思い出であるかのように記憶を脚色して、その記憶をたぐりながら自慰にふけるような色情狂 ではないのだ……。
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