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第3話
「あ、おはようございますっす! アニキ!」
「おはよう、ノリくん。あれ、なんかいい事でもあった?」
「えー? へへ、アニキには何も隠し事できないっすね! 実はー、今日は仕事終わったらデートなんすよねぇ」
職場の後輩、ノリは怜の数少ない心を許せる相手だ。
二十二歳の彼は三歳しか違わないが、このスタジオに入ってきた時から怜に懐き今ではアニキなんて呼ばれている。慕ってくれるのは素直に嬉しい。
ノリと彼の恋人の加奈は、怜が酷く落ち込んでいた時に親身に気にかけてくれた存在でもある。
「そうなんだ。加奈ちゃんによろしくね」
「っす。アニキにもまたそろそろ会いたいって言ってたんで、今度鍋でもしましょ。ところでー、アニキもなんか嬉しそうな顔してるっすね?」
「んー? うん、ちょっとね」
はぐらかしてはみたけれど、ノリの勘は当たっている。そう見えるのは、相山梓の新作に昨夜浸ることが出来たからに違いない。
ふわふわと体が浮くような幸福感は今も続いているくらいだ。
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