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第4話
今度ノリがアパートに遊びに来た時にまた相山梓の話を聞いてもらおうと思いながら、怜は今日の予約の確認を始める。受付から清掃、何でもこなすことが求められる中で、利用者の顔を覚えるのも重要なことのひとつだ。
見知った名前が連なった予定表を頭に入れていると、さっそく本日の最初の利用者が訪れる。同時に気づいたノリに自分が出ると答え怜は受付へと顔を出した。
「おはようございます」
「おはようございます、アズサさん。お久しぶりですね」
「はい、お久しぶりです」
「お元気でしたか? えっと……今日はカペラレコードさんはBスタジオですよ」
「元気ですよ、鳴海さんも元気そうですね。Bは二階でしたっけ」
「二階の突き当りです。お元気そうでよかったです。はは、僕もアズサさんの仰る通りに」
すらりとした体型に長身、常にマスクをしている年下であろうアズサはこのスタジオに訪れるようになってから一年、まだ二~三度ほどだろうか。
少し癖のあるダークブラウンの髪に穏やかな空気。涼しげな瞳と声の柔らかさも相まって、落ち着いた印象を与える彼と接する時間は、怜にとって不思議と肩の力が抜ける時間でもあった。
多くの他の客のように怜を食事やらなにやらに誘ったりすることはない、というのも大きい。線が細く柔和な雰囲気を持った怜は、男女問わず毎日のように声をかけられてしまうのだ。
そういった付き合いはしないと決めているが、客なのだから角を立てないように断らねばならず、怜にとっては苦痛でしかなかった。
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